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用語集

見積原価(原価見積)

著者:図研プリサイト 平石 和也

更新:2020/09/04 18:00

見積原価(英:estimated cost)とは、新製品の企画・開発段階において、過去の経験や知識に基づいて見積もられた製造原価のことです。


見積原価は「原価見積」とも呼ばれます。製品1台あたりの製造原価の見積値を「原価見積」と呼び、その値に生産台数を乗じたものを「見積原価」と呼んで区別することもあります。


新製品の販売価格は、見積原価に利益を加えて決定します。見積原価が不正確だと販売価格を正確に決めることができないため、「新製品がたくさん売れたのに赤字になった」といったことが起こりえます。したがって、見積原価は企業経営において重要な値となります。また、原価企画において目標原価を設定する場合には、正確に算出することが必要不可欠です。


見積原価の算出方法

見積原価を算出する手法は、大きく分けると次の通りです。


  1. 経験見積法(勘見積法)
    詳しい人(Ex.ベテラン)の勘や経験で原価見積を行う方法です。運用開始は容易ですが、ベテランの離職や、後任者への引継ぎなどが大きな課題となります。

  2. 比較見積法(類似見積法)
    類似製品の原価を参考に原価見積を行う方法です。経験見積法と同様に、運用開始のハードルはそれほど高くありませんが、類似製品に関する担当者の知見に差があると、結果がばらついてしまう課題があります。

  3. 概算見積法(コストテーブル法)
    コストテーブルを使用して原価見積を行う方法です。製品を構成する個々の部品ごとに、その諸元や購入単価の統計情報から原価見積を行い、論理的に算出された値を積み上げて製品の原価見積を行います。原価を決める要素の洗い出しや、CADのモデリングルール策定と順守など、構築や運用が非常に困難であることが課題です。


見積原価の算出方法

見積原価と標準原価の違い

製造段階において、製造部門や購買部門が目標とする原価を「標準原価」と呼びます。見積原価と標準原価は、製造前に求められる原価という点で、算出方法などは共通点が多いのですが、その性質が異なります。


通常、仕事の日程計画を立てる場合、「うまくいったら何日間」「普通だったら何日間」「まずかったら何日間」といったように、ベストケース、ワーストケースを考慮して必要な時間・日数を検討します。


上記「普通だったら何日間」で仕事が終わった場合の予想される製造原価が「見積原価」になります。見積原価は、現在の企業の「実力値」を表し、事前に実際原価を推定するものです。一方、「うまくいったら何日間」で終わった場合の原価が「標準原価」となります。標準原価は、仕事を効率良くこなし、ムダを無くした状態で達成可能な最低の製造原価です。


まとめ

本記事の内容をまとめると次の通りです。


  • 見積原価は、新製品の企画・開発段階で、販売価格が適正であるか確認するための製造原価の予測値である。

  • 見積原価の算出方法は「経験見積法」「比較見積法」「概算見積法」の3種類がある。

  • 見積原価は企業の「実力値」を表し、標準原価は「達成可能な最低の製造原価」を表す。


参考文献