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用語集

PLM

著者:図研プリサイト 平石 和也

更新:2020/06/22 09:00

PLM(英:Product Lifecycle Management)とは、製品の企画、設計から生産、販売、廃棄に至るまでのライフサイクル全体における製品情報を一元管理することで、開発期間の短縮、生産の効率化、そして市場の求める製品を適切な時期に市場投入することを目指す経営コンセプトです。


アメリカの自動車メーカーである、アメリカン・モーターズ・コーポレーション(英:American Motors Corporation 、略称AMC)が、1985年に初めて製品開発にPLMを取り入れたと言われています。1987年にクライスラー社がAMCを買収した際、PLMを活用した開発の効果を認めて、そのプロセスを維持したと言われています。


イギリスおよびアメリカに拠点を持つ独立調査会社であるCambashi社のマイク・エバンス氏は、2001年に「PLMは、CRM(顧客管理)、SCM(サプライチェーン管理)、ERP(企業リソース管理)と並び、製造業を支える4つのIT基盤の内の1つである」と報告しています。


日本では、2000年代前半、ネクステック株式会社創業社長の山田太郎氏(現在は参議院議員)によって普及しました。


ITシステムとしてのPLM

製品ライフサイクルの情報を単一のソフトウェアですべて管理することは非常に難しいです。したがって、本来PLMシステムとは、各部門や各フェーズのデータ管理を担うソフトウェア、それらが持つデータを連携するためのソフトウェア、プロセス全体を把握するのに必要な情報を統合して表示するソフトウェアなど、複数のソフトウェアの集合体で構築されるシステムを指します。


上記システムの中核を担うのは、CADデータや部品表など、設計成果物を管理するソフトウェアです。設計成果物を管理するソフトウェアは、PDM(英:Product Data Management)と呼ばれ、1980年代から大手CADベンダーが開発に注力してきました。その後、PDMは変更管理やワークフロー管理といった機能を実装して進化し、2000年代に入ると、生産準備のマスタデータとなるBOMの管理や、データ分析に強味を持つ製品などが現れました。この頃から、PDMではなく「PLMシステム」の呼称で各ベンダーが提供を始めました。


昨今「PLMシステム」として提供されている製品は、概ねこの「進化したPDM」のことを指します。


ITシステムとしてのPLM

製造業におけるPLMシステムの重要性

近年、多くの製造業は「製品(モノ)ではなくサービス(コト)を売る」業態への変革が求められています。


例えば、自動車業界だと、ユーザーは「高級車の所有による自己満足感」より、「移動手段として使える利便性」に対価を支払っている人が多いという分析から、定額制で新車に乗れるリースサービスや、全国のコインパーキングで乗り降りができるカーシェアリングサービスなどが始まっています。


このような変革が起こると、製品の高性能化・多機能化といった「品質(Q)」を中心に据えたアプローチだけで市場を勝ち抜いていくのは困難です。顧客のニーズを満たす「サービスとの組み合わせ」による製品開発が求められ、「コスト(C)」や「納期(D)」を一番に考えるケースも増えると思われます。


今まで以上にQCDのバランスを重視して製品開発を行っていくためには、設計諸元だけではなく、部品の生産や調達にかかるコストや納期など、開発・設計部門が作成する成果物に、製造部門や購買部門が持っている情報を紐づけて管理するIT基盤「PLMシステム」が重要となります。


まだ、PLMシステムを導入していない製造業の方は、「開発・設計業務の効率化ツール」ではなく、「経営を支えるインフラ」として導入検討することを強く推奨します。



参考文献