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コラム

何が違うの!?いまさら聞けない BOM の種類と目的を徹底解説[前編]

著者:図研プリサイト 末永 真一

2022/02/10 12:00

関連キーワード:

  • BOM
  • 部品表
  • 見積BOM
  • 標準E-BOM
  • 受注BOM
  • PLM

はじめまして。図研プリサイト PLM技術部の責任者をしている末永と申します。私の部署は、当社PLMシステムの導入から運用開始後のサポートまで、お客様企業内の運用支援を行っています。組立型製造業における標準的なモノづくりプロセスを熟知しているエンジニア集団だと自負しております。

PLMは、BOM(部品表)を軸として、製品開発プロセスにおける様々な情報を管理する仕組みです。しかし、BOMと一口に言っても、その用途や目的により様々な種類が存在します。また「S-BOM(サービスBOM)」など、同じ呼び名であっても、お客様によって内容が異なる場合も往々にしてあります。

本コラムでは、それら目的別のBOMについて、当社なりに再定義した内容を解説していきたいと思います。このようなコラムを書かせていただく経験がなく、分かりづらい部分もあるかと思いますがご容赦下さい。それでは最後までよろしくお願いします。

説明をはじめる前に①:本コラムでご紹介するBOMについて

今回、本コラムにて解説する各種BOMは、組立型製造業のエンジニアリングチェーン(製品開発軸)での利用が想定されるBOMです。エンジニアリングチェーンにおいて広く「E-BOM」「M-BOM」「S-BOM」と呼ばれるBOMを、当社なりに8種類のBOMに分類して、それぞれ詳しく解説いたします。


エンジニアリングチェーンにおける広義のBOMを8種類に分類

説明をはじめる前に②:生産スタイルの違いについて

本コラムにて説明するBOMを正しく理解いただくには、大別すると2つに分かれる製造業の生産スタイル、「企画量産型」と「個別受注型」の違いを理解しておく必要があります。ここでは、その違いを簡単に説明しておきたいと思います。(下表)

企画量産型と個別受注型の違い


企画量産型の場合、受注前に設計を行う必要がありますので、目標原価は設定されるものの、実際の売価ははっきりしないまま設計を行うことになると思います。一方、個別受注型の場合は、受注後に設計を行うため売価は明らかです。したがって、企画量産型は設計自由度が高いものの利益予測が難しく、個別受注型はある程度利益予測の精度を保てるものの設計の自由度は低くなります。

また、企画量産型の場合は、販売された製品が最終消費先として、どこで利用されているか完全な把握が困難です。一方、個別受注型の場合は、1社1社個別に販売している訳ですから、どこで利用されているかを明確にできます。最終消費先が明らかなので、市場に出てからの不具合対応を速やかに開始できるというメリットがあります。

同じ「設計」や「保守」というフェーズであっても、生産スタイルによって状況が異なること、ひいては必要となる情報が異なることをご理解いただきたいと思います。

昨今だと、企画量産型でも、より顧客のニーズにマッチした製品を提供するためにBTO形式で販売・生産するような企業が増えています。個別受注型についても、都度設計するのではなく、モジュラーデザインの手法を取り入れて設計レス化し、より短納期での販売・生産を実現している企業も出てきています。生産スタイルのハイブリッド化が進み、同じ企業内でも、製品ごとに求められる情報が異なるという状況が発生しています。

各種BOMの説明は、これら製造業の特性を加味して進めていきたいと思います。まずは、広義に「E-BOM」と呼ばれる部品表を3つに分類し、それぞれのBOMについて解説していきます。

見積BOM

見積もりを行うフェーズはいくつかあるかと思いますが、ここでは企画段階(企画量産型)や引き合い段階(個別受注型)で製造原価(見積原価)を算出するために利用されるBOMとします。

受注前の段階となるため、まだ図面や3Dモデルの設計はされていない場合が多く、既存製品のユニットを組み合わせ、見積BOMとして作成します。新規部品については類似形状部品の単価を参考に見積BOMに登録される場合もあります。また構成部品の材料や工法、購入先の違いなどにより、製造原価が変わってくるため、一つの製品に複数パターンのBOMを登録されることが多くあります。

個別受注型の場合は対競合を意識してできるだけ精緻な見積もりをしたいという要求があるため、見積BOMを導入/検討されるケースが多くあるように思います。

見積BOM

標準E-BOM

いわゆるE-BOMです。要求仕様に基づき、設計者が設計した製品の構成情報をBOMとして転写します。製品の構成情報を図面や3Dモデルと共に後工程に正しく伝えることを根本的な目的としています。

設計変更などがあった場合は変更箇所を差分として提示することが求められます。設計変更連絡書などを用いて設計変更の理由や変更箇所、変更適用の緊急性など細かく記載されることが一般的です。また、成果物(BOMや図面)については設計変更ごとに版管理されます。

BOMを活用することで設計の進捗に合わせてリアルタイムに予測原価を算出できるようになり、図面が完成する前の段階から公開することで後工程のメンバーによる事前検討を可能にし、手戻りを削減することでリードタイムを短縮する効果が見込まれます。

標準E-BOM

受注BOM

標準E-BOMはカタログ品や標準品の構成を管理するために利用されるのに対し、受注BOMは受注案件ごとに個別にカスタマイズされた製品の構成を管理します。通常は個別受注型企業特有のご要件になります。

BOMは部品やユニットを特定するために品番で管理されます。通常、同じ品番のユニットは同じモノを表しますが、受注BOMでは同じ品番でも受注番号ごとに個別の構成を表現可能としています。(構成が異なるBOMを品番変更して管理する企業も多いです。この場合、受注BOMは標準E-BOMと同じ管理方法になります)

品番ではモノが特定できず、品番+受注番号でモノが特定される点が標準E-BOMと異なります。

受注BOM


次回は、広く「M-BOM」「S-BOM」と呼ばれる部品表を当社なりに再分類し、分類しなおした各BOMについて解説したいと思います。