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用語集

MRP

著者:図研プリサイト 佐藤 崇行

更新:2021/04/27 17:00

MRP(英:Materials Requirements Planning)とは、ITシステムを用いて生産に必要な部材(原材料、部品)と所要量を計算し、各部材の手配数量を決定する計画手法、または、そのために利用されるITシステムのことである。


所要量の計算(所要量展開)はBOMを基本情報として行われる。したがって、設計変更をタイムリーに反映するなど、PLMシステムとの連携が重要である。


もともとMRPは1970年代頃から広がった考え方であり、在庫管理を目的として資材調達を最適化するためにMRPが誕生した。在庫が過剰になっているとキャッシュフローを悪化させ管理コストを上げてしまい、対して在庫の過不足がなければ、市場の需要を満たしつつ、キャッシュフローを改善しさらなる投資を可能とするため、「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」準備するための手法がMRPとなる。

MRP2とは?

1970年代に生まれたMRPは、部品や材料、資材の在庫を中心に考え、効率的な生産管理を目指す手法であるが、1980年代に入ると、これに加えて人員や設備、資金といった生産計画を立てるうえで必要な要素を総合的に考えることが求められるようになり、従来のMRPを発展させて生まれた考え方がMRP2=Manufacturing Resource Planning(製造資材計画)である。


MRP2では、部品や材料に加えてコスト・人員・物流までを総合的な視点から管理することにより生産最適化を目的としており、従来の部品・材料だけに注目した管理手法ではなく、生産管理を通して経営資源の最適化へと繋げていく仕組みへと発展した。


MRPとERPの違い

昨今ではMRPではなく「ERP(Enterprise Resource Planning)」が主流となっている。


  • ERPとは
    ERPはMPR2の発展形であり、1990年代に入り海外企業のグローバル化が進むと、情報管理の範囲が、受注、出荷、財務、会計など経営資源のほどんどを含むようになり、社内全体の情報を管理することで、全体最適化を目指そうという取り組みが注目された。
    そこで登場したのがERP(Enterprise Resource Planning)という概念で、ERPは「統合基幹業務システム」とも呼ばれ、複数の業務システムを統合し、情報資源の一元管理を実現するためのITシステムとなる。
    ERPでは企業全体の業務プロセスを見直すことで最適な企業経営へ目指し。また、このERPで重要になるポイントが基幹業務のシステム化となる。生産業務や会計業務をシステム化することで、飛躍的な社内効率向上が見込まれる。

  • MRPとERPの違い
    MRPが生産部門における在庫管理だったのに対し、ERPは生産部門に加え会社全体のヒト・モノ・カネ・情報を管理することが目的となる。ERPシステムを導入することで、これまで部署単位でしか管理できていなかった情報を会社全体で把握することができるようになり、経営層はその情報を元により適切な経営判断をおこなうことが可能となる。


MRPとERPの違い

MRP導入のポイント

今では「MRPシステム」という名目でシステムが導入されることは少なく、ほとんどの場合「生産管理システム」として、MRPの役割に加えて生産の工程管理や品質管理、販売管理や出荷管理など幅広い業務をカバーするためのシステムとして導入・運用されていますが、MRPシステム・生産管理システムを導入にあたっては、生産計画の変更や在庫管理などについてのルールを整備し以下のようなポイントを準備しておくことが必要です。


  • ポイント①:BOMの整理
    MRPではBOM(部品構成表)に従って生産に必要な部品と資材の数量を計算します。BOMが整理されていなければMRPシステムも機能しません。全社で部門表の書式を統一し、管理担当の部門を決めて管理していく仕組みを整備することが求められます。

  • ポイント②:部門間コミュニケーション
    MRPを導入しても、仕様変更・発注変更・計画変更は常にイレギュラーで発生するものなので、それらへの緊急的な対応が必須です。製造・設計・品質管理・在庫管理・資材購買・営業などの部門間で綿密なコミュニケーションを取り、変更を即座に反映させるようにしてカバーしていく必要がありますので、部門を横断して計画変更などの情報をタイムリーに共有できる仕組み作りが必要です。

  • ポイント③:在庫管理体制の整備
    MRPは現時点の在庫量から、将来的に生産に必要となる在庫量を予測します。しかし、在庫管理体制自体に問題があり、在庫数などを正確に管理できていない状態ではMRPがいくら優秀でも機能しませんので、MRPシステム導入時はしっかりとした在庫管理体制が重要になります。

まとめ

本記事の内容をまとめると次の通りです。


  • MRPとは、ITシステムを用いて生産に必要な部材(原材料、部品)と所要量を計算し、各部材の手配数量を決定する計画手法、または、そのために利用されるITシステムのことである。

  • 部品や材料に加えてコスト・人員・物流までを総合的な視点から管理することにより生産最適化を目的としており、従来の部品・材料だけに注目した管理手法ではなく、生産管理を通して経営資源の最適化へと繋げていく仕組みへと発展したのが、MRP2となる。

  • MRPが生産部門における在庫管理だったのに対し、ERPは生産部門に加え会社全体のヒト・モノ・カネ・情報を管理することが目的となる。

  • MRPシステム・生産管理システムを導入にあたっては、生産計画の変更や在庫管理などについてのルールを整備し以下のようなポイントを準備しておくことが必要。



MRPは製造業に欠かせない管理手法として多くの企業から採用され、その他の管理も一括して行うERPへと発展し、システムにもさまざまな製品があるため、自社の商品や業務フローに適したシステムを選び、導入することが大切となる。