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用語集

ナレッジマネジメント (知識管理)

著者:図研プリサイト 佐藤 崇行

更新:2020/08/21 13:30

ナレッジマネジメント(知識管理)とは、個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法のことである。

多くの企業において、文書化した業務知識やノウハウをグループウェアなどで共有し、文書の検索性を全文検索システムなどで高めて社内への流通を促進するといった取組みが行われている。ただし、共有化された情報が積極的に利用されず、業務フローに浸透しないといった課題も多く発生している。


ナレッジマネジメントを成功させるには、共有化された情報の利用を促す仕組みや活動が重要である。

ナレッジマネジメントが注目されている理由は?

ナレッジマネジメントは決して新しい経営手法ではなく、戦後の高度経済成長期に、日本企業の多くがナレッジマネジメントを取り入れており、トップダウンというわかりやすい指示系統が構築されているため、チームワークを得意とする日本企業とも相性が良い経営手法である。
また、伝統的な日本企業では、ベテランの暗黙知がそれぞれの職場で次世代に受け継がれていく企業風土や文化を持っていたと考えており、そうした暗黙知の継承が日本企業の「強み」であった。


ただ、こうした継承には膨大な時間がかかり、終身雇用制度の事実上の崩壊・雇用形態の多様化などが進んだ現在では、伝統的な暗黙知の自然継承に任せているだけでは企業全体の知の総和量は維持が困難になってきている。


しかし、今日では暗黙知を形式知へと転換するために統計学や人工知能を導入した方法が進化しており、一部の暗黙知を形式知へと転換・集積することで、労働者の質を短期間に向上させたり、従来は現場でベテランと一緒に働くことで自然継承が行われてきた技術の継承を短期化・高密度化させたりといった成果がみられるようになってきていることが、注目の理由の一つとなっている。

ナレッジマネジメントを導入するメリット

ナレッジマネジメントを導入するメリットとして、例えば以下の3つが挙げられる。


  1. 業務効率化
    データ化した情報を管理・蓄積し、利活用することで、文書作成の手間が省けるだけでなく、これまで行っていた業務フローを再構築しマニュアル化することも効果的で、また、業務のやり方にばらつきがなくなり最適化されることで、業務を初めて担当するメンバーでもスムーズに習得し対応することが可能となる。

  2. 属人的業務の回避
    組織の中で、誰にも共有されない業務を進めるための知識=暗黙知があることは組織にとってはリスクとなり、その社員でなければ進められないことが増えるため、共有することで負担やリスクを分散することができる。属人的な仕事をする場合の多くは、仕事に追われて共有する余裕をなくしがちなため、ナレッジマネジメントで個々の負担をできるだけ軽くする仕組みを構築し、共有化を促進する必要がある。

  3. 営業や技術の強化
    以前は、営業職や職人といわれるような技術職は、見よう見まねで仕事を覚えていく風土があったが、現代は、そのように共有する機会や時間が少なくなっている。また、情報共有の仕方が確立されていない場合、どれだけ会社にとって重要なノウハウもその人の周辺にしか伝わらずに、ある支店で素晴らしい営業の提案スキームを編み出したとしても、別の支店へ伝わらないまま埋もれてしまうこともおきる。しかし、ナレッジマネジメントを進めることによって情報やノウハウをベストプラクティスとして共有し横展開していくことが可能となる。


ナレッジマネジメントの課題

ナレッジマネジメントを推進する上での代表的な課題例として以下がある。


  • 情報が分散していてナレッジを集めにくい
    社内に蓄積されている既存の情報を収集し、ナレッジとして活用していく場合、課題となりやすいのが情報の分散である。
    また、昨今、情報を共有化するITツール(ビジネスチャット、情報の共有化を支えるグループウェア、文書を格納する文書管理システム、文書を検索するエンタープライズサーチなど)が多くのITベンダーから提供されているが、“人間にしかできない情報の獲得と処理”が求められるナレッジマネジメントは、“情報の共有化”だけで成し遂げられるものではなく、実際、「ツールを導入して共有化を進めたが、社内に情報が浸透しない」といった課題も聞くことが多い。

  • 情報が多く必要なナレッジの取捨選択が難しい
    この場合は、ナレッジ活用の仕組みに問題があることが理由として挙げられる。
    要不要にかかわらず多くのナレッジが強制的に送り込まれると、ユーザーは必要なナレッジを確認できず、やがて無関心になってしまいがちとなる。ユーザーが気付いていない「価値ある情報」を手間なく探し出すことができる仕組みが重要である。

ナレッジマネジメントを成功させるポイント

テレワークによる働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、感覚的な知識である暗黙知をいかにして形式知化し、どのように共有するかがポイントとなる。


そのためにも、ナレッジマネジメントを情報の共有化だけに留めず、ユーザーそれぞれがどこにいてもスピーディに必要な情報にアクセスできるシステム・気づきを与える仕組みや活動が重要である。