Case study
導入事例

Qualityforce

ボトリングシステム国内最大手メーカーの導入事例(澁谷工業株式会社)

澁谷工業は、清涼飲料やアルコール飲料などの容器洗浄・充填・キャッピング・ラベリングを自動で行う「ボトリングシステム」の国内トップシェアメーカーだ。同社のボトリングシステムは世界でも大きなシェアを誇っており、容器の形状や液の種類、生産能力に応じた各種タイプの機械は、清酒、洋酒、ビール、清涼飲料、調味料など、あらゆる業界に納入されて活躍している。

ボトリングシステム以外にも、レーザ光を応用した様々な工作加工システム、エレクトロニクス時代を担う半導体/電池製造システム、大切な命を守る医療・医用機器、選果・選別作業の自動化を図る農業設備システム、未来の医療を支える再生医療システムの開発など、常に時代のニーズを先取りし、世界のトップを走る技術で新たな未来を創造する姿勢を貫いている。
  • 世界各地に150システム以上納入されているシブヤの無菌充填システム
世界各地に150システム以上納入されている
シブヤの無菌充填システム
そんな同社は、社内のDXを推進する流れの中で、2022年7月、図研プリサイトが開発した品質保証部門向けクレーム情報活用ソリューション「Qualityforce」の導入を決定した。今回、本製品導入の中心を担った、同社取締役副社長の中様、バリデーション・品質本部の太田様、中田様のお三方に、導入の経緯や狙いについてお話を伺った。

お客様の企業プロフィール

会 社 名 澁谷工業株式会社
本  社 石川県金沢市大豆田本町甲58
創  業 1931年3月
設  立 1949年6月
従業員数 3,635名【連結】(2022年6月現在)
事業内容 ボトリングシステム、包装システム、物流搬送システム、製薬設備システム、再生医療システム、エンジニアリング、生産管理システム、洗浄/環境設備システム、農業設備システム、食品加工システム、レーザ加工システム、ウォータジェット加工システム、水素ガス切断加工システム、半導体製造システムおよび医療機器の製作並びに販売
お話を伺った方
取締役 副社長
再生医療システム本部 本部長
開発本部 本部長
中 俊明 様

取締役
バリデーション・品質本部 本部長
BS第1技術本部 副本部長
太田 正人 様

バリデーション・品質本部
品質保証部 部長
中田 竜弘 様

(取材年月日:2022年10月21日)
採用いただいたソリューション
Qualityforce

過去のクレーム対応を有効活用できていない状況に心当たり

澁谷工業は2013年に再生医療システム事業を立ち上げ、ボトリングの無菌化技術を生かした様々な細胞培養システムをニーズに合わせて製造している。現在もなお、がん治療、肝硬変治療など様々なプロジェクトを大学やスタートアップ、製薬会社と組んで進めており、多くの人々が健康でいられる社会づくりに貢献している。

同社にて再生医療システム本部、ならびに開発部の本部長を務める、取締役副社長の中氏は、2021年10月、幕張メッセで開かれた、AI、ブロックチェーン、量子コンピュータの3つのテーマで構成される展示会「NexTech Week 2021 秋」に訪れていた。中氏は元々、ある仕事の中で量子コンピュータ技術が応用できるか調査するために足を運んでいたが、会場内で開催されていた図研プリサイトの無料公開セミナーに足を止めたという。
  • 取締役 副社長 再生医療システム本部 本部長 開発本部 本部長 中 俊明 氏
取締役 副社長
再生医療システム本部 本部長 開発本部 本部長
中 俊明 氏
同セミナーでは、当社の尾関が、製造業のDXにおいて取り組むべき主なテーマの一つである「ナレッジ活用」の課題を、品質保証部門の例を挙げて解説した。顧客クレームが発生した際、過去にあった類似のクレーム対応策が有効であるにも関わらず、その情報が見つけ出せずにクレーム対応の初動が遅れてしまう課題と、それをAIによって解決するクレーム情報活用ソリューション「Qualityforce」に中氏は興味を持ったと話す。

「当時DXに関しても社内でテーマになっており、セミナーでちょうどその話をしていたので気になって足を止めました。品質保証部門の課題に関しては思うところがあったので、図研プリサイトのブースにも寄って話を聞きました。その日はそのまま帰ったのですが、後日電話が来たので社内の関係者に話をしたところ、私以上に関心を寄せる人間が多かったので、一度具体的に話を聞いてみようということになりました」(中氏)
  • 図研プリサイトが登壇した「NexTech Week 2021 秋」無料公開セミナーの様子
「NexTech Week 2021 秋」無料公開セミナーの様子

問題のある設計の繰り返しや、調査工数の増加が課題

澁谷工業では、内製で業務システムを構築し、製品や部品の情報をデータ登録しているという。しかし、登録したデータをほとんど活用できていないと中氏は語る。

「新製品の構想審査(デザインレビュー)に参加した際、過去に他の製品で問題の起きた設計がそのまま出てくることがありました。発生した問題はデータとして登録しているはずなので、担当者に過去のデータをちゃんと調べたか聞くと、見つけられなかったという回答が返ってきました」(中氏)

現在のシステムは、データのキーワード検索ができるという。しかしながら、過去のデータを見つけられないのはなぜなのか。同社バリデーション・品質本部 品質保証部 部長の中田氏は、具体的な例をあげて教えてくれた。
  • バリデーション・品質本部 品質保証部 部長 中田 竜弘 氏
バリデーション・品質本部 品質保証部 部長
中田 竜弘 氏
「例えば、”液が漏れた”という事象が発生した場合、”液漏れ”や”液リーク”など、担当者ごとに異なる表現でデータが登録されます。同様の事象が多数登録されているにも関わらず、キーワードと全く同じ表記の単語が登録されたデータしか見つからなかったり、最悪の場合は全く見つからなかったりします」(中田氏)

また、社内の技術部門から品質保証部に調査依頼があった際、過去の調査結果が活用できないことで対応に時間がかかってしまう課題もあると、同社バリデーション・品質本部 本部長であり、BS第1技術本部の副本部長も務める太田氏は教えてくれた。

「例えば、ある部品が折れてしまった場合、破断面を観察して、どういう形で折れたのか、力をどの方向にかけたのかなど、社内で検討しながら、工業試験職員や大学の先生と議論します。平均で週2件くらいの調査依頼があり、1件当たりの調査時間は平均で3週間要しています」(太田氏)
  • 取締役 バリデーション・品質本部 本部長 BS第1技術本部 副本部長 太田 正人 氏
取締役 バリデーション・品質本部 本部長
BS第1技術本部 副本部長
太田 正人 氏

早期段階で品質を作り込み、問題を未然に防ぐ環境を構築!

Qualityforceは、クレームとして連絡を受けた文章をそのまま入力するだけで、入力された文章と過去のクレーム文章の類似度をAIが比較して抽出する。「液漏れ」、「液リーク」、「液が漏れた」など、同じ表記で文章が登録されていなくても、類似の過去クレームを見つけることが可能だ。

現在、同社の品質保証部は、ボトリングシステムの技術部門にQualityforceを利用してもらうための準備を進めている。技術部門へ展開する狙いについて、太田氏と中田氏は次のように語った。

「過去の不具合は“負の遺産“なのですが、貴重な情報資産であり、言い過ぎかもしれませんが“知的財産“に相当する価値があると思います。それを機械の設計で活用できれば、品質トラブルを未然に防げると考えています」(中田氏)
  • クレーム文章をそのまま入力するだけで、入力された文章と過去のクレーム文章の類似度をAIが比較して抽出する
クレーム文章をそのまま入力するだけで、入力された文章と過去のクレーム文章の類似度をAIが比較して抽出する
「従来の品質保証は、よく”最後の砦”と表現されるように、完成した製品を一生懸命検査することに重きをおいていました。Qualityforceの導入によって、製品開発の早い段階から品質を作り込んでいくことができます」(太田氏)

また、部品破損などの調査にかかる時間に関して、中田氏は「過去の調査結果がすぐ見つかるようになると、類似事象が過去にあった場合、社内での検討や専門家との議論のための重要な参考資料となりますので、調査完成に要する時間の大幅な短縮が期待できます」と期待を寄せてくれた。

技術情報プラットフォームへの進化に期待

ボトリングシステムの技術部門においてQualityforceの利用を開始する同社だが、効果が出た暁には、メカトロシステムや再生医療システムなど、他部門にも横展開していくことを検討している。

また、Qualityforceの導入と並行して、同社では未登録の調査依頼結果のデータ化も進めている。これらデータ整備がある程度進んだタイミングで、マトリクス図や連関図など、データ分析を支援する機能の活用も始めていきたいとのことだ。

最後に、Qualityforceや図研プリサイトに対する今後の期待を伺ったところ、太田氏から次のようなコメントをいただいた。
  • (左から)中田 竜弘 氏、中 俊明 氏、太田 正人 氏
「過去のクレーム情報が見つかった後、すぐに関係する技術情報へアクセスできるようにしてほしいです。例えば、技術情報データベースへのリンクや、関連ファイルをクレーム情報に埋め込むことができれば、他のシステムや検索エンジンを別途立ち上げる手間がなくなります。技術情報を集約したプラットフォームとして活用できるようになることを期待します」(太田氏)
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