Case study
導入事例

Visual BOM

【番外編】「PLM x Web3Dで実現する製造業DX」セミナーレポート(株式会社タツノ)

2022年2月16日(水)に、Visual BOMの共同開発を手掛けるラティス・テクノロジー株式会社と共催で、オンラインセミナー「PLM×Web3Dで実現する製造業DX ~ 世界三大ガソリン計量機メーカー タツノにおける保守サービス変革」を開催しました。

本セミナーでは、世界三大ガソリン計量機メーカーである株式会社タツノのお三方に登壇いただき、Visual BOM を中心に構築した、サービス部門向け3Dパーツリスト自動生成システムの仕組みとその効果についてお話いただきました。今回、本レポートにてその模様の一部をご紹介します。
  • PLM×Web3Dで実現する製造業DX

開催概要

タイトル 『PLM x Web3D』で実現する製造業DX ~ 世界三大ガソリン計量機メーカー「タツノ」における保守サービス変革
開催日時 2022年2月16日(水)10:30 - 12:00
会  場 オンライン
プログラム (講演者名の敬称略)
◆セッション1:製造業のDXを3Dで実現するための3つのポイント
 ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長
 鳥谷 浩志

◆セッション2:実効性のある製造業DXを目指して~『M-BOM/S-BOM x Web3D』による保守サービス業務変革
 株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 次長
 足代 隆

 株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 係長
 小西 理之

◆スペシャルセッション:タツノに学ぶ、製造業におけるDXの進め方
 株式会社タツノ 取締役(当時)
 羽山 文貴

 ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長
 鳥谷 浩志

 株式会社図研プリサイト 代表取締役社長
 尾関 将
採用いただいたソリューション
Visual BOM

DXの本質は「設計情報の流れ」を創ること

最初のセッションは、ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長の鳥谷氏に「製造業のDXを3Dで実現するための3つのポイント」という演題でお話しいただきました。

鳥谷氏は、これまでの日本の製造業の強みであった「現地現物のすり合わせ」や「図面を読み解く現場力」を超軽量3D「XVL」で再現し、それを強みにすることがDX推進の一つであり、同社が提唱する「3Dデジタルツイン®(現物の双子となる超軽量3Dモデル)」という考え方によってこれが達成できると話しました。(3Dデジタルツイン®の詳細については、ぜひ鳥谷氏の連載コラムをご覧ください)

  • ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷氏
ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷氏
また、DXの本質は、設計情報を全社的に活用するための「流れ」を創ることであると鳥谷氏は話しました。

Visual BOMをはじめ、同社XVLソリューションによる「データの流れ(XVLパイプライン)」を構築するだけではなく、設計部門で作られた3Dデータをいかにして他部門に展開するか「活用の流れ」を創ることが重要であり、タツノにおけるサービス部門の3Dデータ活用が実現できた理由は、この2つの流れを創出した結果であると鳥谷氏は強調しました。
  • DXの本質は設計情報の流れを創ること
DXの本質は設計情報の流れを創ること

サービス部門の業務効率化を3Dデータ活用で実現

鳥谷氏に続いて、株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 次長の足代氏と、同グループ 係長の小西氏に、本セミナーのメインセッション「実効性のある製造業DXを目指して~『M-BOM/S-BOM x Web3D』による保守サービス業務変革」をお話しいただきました。
はじめに、足代氏よりタツノの企業紹介をしていただきました。同社は、ガソリン計量機や水素ディスペンサーの製造・販売をはじめ、燃料供給施設の設計・施工も手がける、エネルギーインフラの総合メーカーです。国内78カ所に事業所を展開し、ガソリン計量機の国内シェアはトップの65%を獲得しています。海外においては、世界80以上の国と地域に製品を販売しています。

同社の生産拠点である横浜工場は、年間1万2千台の生産を実施しています。近年は、ガソリンベーパーを液化して回収する環境性能を搭載したガソリン計量機や、次世代エネルギーとなる水素計量機など、最新かつ独創的な計量機を生み出し続けています。また、工場内にショールームを併設しており、年間約3,000人の見学を受け入れています。近隣の小学校の社会科見学を受け入れるなど、地域社会との交流を積極的に図っているとのことです。
  • 株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 次長 足代氏
株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 次長 足代氏
続いて、小西氏よりサービス部門における3Dデータ活用事例をお話しいただきました。同社では、以前利用していたPLMシステムがWindows 10非対応になることをきっかけに新システムへのリプレース検討を開始しました。当時抱えていたエンジニアリングチェーンの重要な課題が解決できそうなこと、ならびにCADとの親和性が高いことが決め手となり、Visual BOMを導入いただきました。

同社エンジニアリングチェーンにおける重要な課題とは、開発部門、製造部門、保守部門などの部門間で必要なデータが共有されていないことでした。また、共有されていないことによって、各部門で同じようなデータが作成されるといった業務の重複が発生してしまうことでした。これら課題を解決すべく、同社ではPLMリプレース検討のタイミングで社内プロジェクトを発足しました。
  • 株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 係長 小西氏
株式会社タツノ 技術管理室 DX推進グループ 係長 小西氏
プロジェクトは、段階的に目標を設定して進められました。STEP1は、M-BOM自動作成の実現と、BOMや図面・技術文書などのデータ一元管理を目標として、2019年度にこれを達成しました。

STEP2は、サービスBOMマスタの構築と、XVLデータの活用を目標として設定し、サービス部門が利用するパーツリストを「Web3Dコンテンツ」として提供する仕組みを2021年度に実現しました。結果として、従来のパーツリスト作成にかかっていた工数の削減、保守部品の検索性向上、3D形状含む詳細でタイムリーな情報をタブレット端末から確認できるといった利便性の向上など、サービス部門の業務効率化を3Dデータ活用で実現することができたとのことです。
  • システム全体図(Web3Dコンテンツ配信)
システム全体図(Web3Dコンテンツ配信)

トップダウンの働きかけが、DXプロジェクト成功の要因

最後のセッションは「タツノに学ぶ、製造業におけるDXの進め方」という演題で、株式会社タツノ 取締役(当時)の羽山氏を迎え、鳥谷氏、図研プリサイト 尾関の鼎談を実施しました。ファシリテーターを務める鳥谷氏の質問に、羽山氏と尾関が回答する形で進行しました。

前セッションで紹介されたタツノの社内プロジェクトを、経営者視点でどのように進めてきたのかという鳥谷氏の質問に、羽山氏は「Visual BOM導入当初は、旧システムの運用を新システムに置き換えただけの動きにとどまっていた。Visual BOMの機能や管理されているデータの内容を見てみると、もっと広い範囲で活用ができると考えてプロジェクトを発足した」と回答しました。
  • 株式会社タツノ 取締役(当時) 羽山氏
株式会社タツノ 取締役(当時) 羽山氏
プロジェクトを進めていくうえで苦労した点について伺うと「図面や3Dデータなど、設計者は自身の成果物を他者と共有する発想がなかったので、共有することで全社的にメリットがあるということを説得するのに結構な労力を要した」とのことでした。

当社の尾関は「日本の製造業はデジタル化が遅れているわけではない。そもそもエンジニアの気質として、データを作ったり溜めたりすることには積極的だ。ただ、多くの企業ではデータが個人資産として水面下に埋没しており、活用の面で諸外国の後塵を拝している。データを企業資産化して全社的に活用するためには、作成ルールや運用規定に準ずる必要があり、エンジニアに制約を強いる部分が生じる。そのためトップダウンでないとうまく進まないことが多く、羽山氏が設計者にデータ活用推進を働きかけたことが、タツノのプロジェクト成功の要因」だと補足しました。
  • 株式会社図研プリサイト 代表取締役社長 尾関
株式会社図研プリサイト 代表取締役社長 尾関
プロジェクトにおいて一番難しかった点について、羽山氏は「すべての3Dデータが完成されたものではなかった」ことだと語りました。「全データを整えてからシステム構築しようとも思ったが、時間がかかり、整え終わるころに時代遅れのシステムになってしまう可能性があるので、できる部分から始めていこうと方針を決めて進めていった」ことが、結果としてプロジェクトを成功に導いたともお話しいただきました。

最後に羽山氏に今後の展望をお伺いしたところ、次のような回答をいただきました。「現在はガソリン計量機をメインで作っているが、脱炭素や自動車のEV化により、タツノの製品やビジネススタイルが今後大きく変化する可能性が高い。そのような変化にも対応しうるシステムの実現をすすめていきたい」(羽山氏)
  • 鼎談の様子
※本記事はPDFでもご覧いただけます。( PDFのダウンロードはこちら )