“デジタイゼーション止まり”の従来システム
経済産業省が2018年9月にレポートを発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が、1年半近く経った今もなお話題となっている。DXとは、ビジネスシーンにおける狭義だと「データやデジタル技術を駆使して、ビジネスに関わるすべての事象に変革をもたらす」ことであり、ユーザーに提供する製品・サービスの変革はもとより、社内の業務プロセスを再構築し、生産性の向上、コスト削減、リードタイム短縮を実現することも含まれる。
多くの企業が取り組んでいるDXではあるが、その実現には大前提として、情報のデジタル化(デジタイゼーション)、ならびに業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)が成されていなければならない。ユーザーに提供する製品・サービスについては、DXに踏み出し始めている企業が増加しているものの、社内の業務プロセスに至っては、その仕組みがデジタイゼーションで止まっている企業は多いのではないだろうか。
セガ・インタラクティブでは、2015年に設計と生産で分かれて存在していた業務システムの企画・運用の部門を統合し、現在の企画設計生産本部 プロダクト業務推進部が新設され、これを期に設計業務の効率化・高度化、ならびに設計と生産の連携強化を果たすべく、新システム導入のプロジェクトがスタートした。 同部・業務企画課の課長の指田氏は、当時の課題を振り返って次のように語った。
「当時の図面管理システムは、紙図面を1ページ毎に画像ファイルに変換して、品番・品名を付けた画像ファイル名で検索できるだけの仕組みでした。たとえば、10枚1組の図面だと検索結果に10件の画像データが出てきてしまうような状態でした。また、納入仕様書や耐久試験のレポートなど、関連する資料は品番に紐づけた形で管理されておらず、一度で目的の情報を探し出すことができませんでした。」
多くの企業が取り組んでいるDXではあるが、その実現には大前提として、情報のデジタル化(デジタイゼーション)、ならびに業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)が成されていなければならない。ユーザーに提供する製品・サービスについては、DXに踏み出し始めている企業が増加しているものの、社内の業務プロセスに至っては、その仕組みがデジタイゼーションで止まっている企業は多いのではないだろうか。
セガ・インタラクティブでは、2015年に設計と生産で分かれて存在していた業務システムの企画・運用の部門を統合し、現在の企画設計生産本部 プロダクト業務推進部が新設され、これを期に設計業務の効率化・高度化、ならびに設計と生産の連携強化を果たすべく、新システム導入のプロジェクトがスタートした。 同部・業務企画課の課長の指田氏は、当時の課題を振り返って次のように語った。
「当時の図面管理システムは、紙図面を1ページ毎に画像ファイルに変換して、品番・品名を付けた画像ファイル名で検索できるだけの仕組みでした。たとえば、10枚1組の図面だと検索結果に10件の画像データが出てきてしまうような状態でした。また、納入仕様書や耐久試験のレポートなど、関連する資料は品番に紐づけた形で管理されておらず、一度で目的の情報を探し出すことができませんでした。」
企画設計生産本部 プロダクト業務推進部 業務企画課 課長 指田 智雄 様
また、課題はデータの検索性だけではなく、設計と生産の連携性にもあった。入社から約20年間、開発部門で主にメダルゲームの電気設計を担当していた、同課 主査の田中氏は次のように語った。
「当社では、(より付加価値の高いものを出したいという設計者の熱意が強く)つくりながらの変更が非常に多く発生します。それにも関わらず、設計変更を生産側に通知するワークフローが中1日、下手すれば2~3日かかっていました。結果として、変更内容が生産側に届いた段階で、すでに結構な数量の部品が作られてしまっている、といったことが起きていました。」
「当社では、(より付加価値の高いものを出したいという設計者の熱意が強く)つくりながらの変更が非常に多く発生します。それにも関わらず、設計変更を生産側に通知するワークフローが中1日、下手すれば2~3日かかっていました。結果として、変更内容が生産側に届いた段階で、すでに結構な数量の部品が作られてしまっている、といったことが起きていました。」
決め手はBOM管理! 多くの候補からVisual BOM を選定
こうした課題を解決すべく、セガ・インタラクティブでは、2015年10月に図面管理システム入れ替えプロジェクトを発足した。情報収集やシステム選定のプロセスを経た結果、2016年1月、Visual BOMの採用が決定した。選定時を振り返り、田中氏は次のように語った。
「他システムベンダーと比較して、課題解決のみならず、システム構築のプロジェクト体制が提案段階で明確であったこと、担当SEの方の説明が納得いく内容であったことが選定の大きなポイントでした。」
また、社内で利用するCADやシステムのサーバー管理を担当する、同課 スペシャリストの松本氏は、次のような理由も大きかったと語った。
「当時は、BOMをデータ管理しておらず、紙に書かれた部品リストを一旦Excelに落とし込み、各部品のコスト情報と突き合わせてコストシミュレーションを行っていました。その手間を省き、且つ、数パターンのコスト情報を突き合わせられる仕組みが欲しかったということもありますね。」
その後、要件定義、システム構築、テスト、社内教育のプロセスを経て、2016年10月、Visual BOM は稼働を開始した。Visual BOM の稼働については、エンドユーザーの大きな抵抗もなく速やかにできたという。
「システムの選定段階から、(エンドユーザーとなる)各部署の代表者にプロジェクトへ参加してもらいました。システムをより使いやすくするためのカスタマイズ仕様の決定に関わってもらうなど、「自分たちで作り上げたもの」という意識を持ってもらえるようにしました。そして、リリース時には、操作説明会をまず代表者に行ったのち、各部署のメンバーには代表者から説明してもらうようにするなど、主体的に取り組んでいただいたことで、スムーズに運用開始できました。」(指田氏)
「他システムベンダーと比較して、課題解決のみならず、システム構築のプロジェクト体制が提案段階で明確であったこと、担当SEの方の説明が納得いく内容であったことが選定の大きなポイントでした。」
また、社内で利用するCADやシステムのサーバー管理を担当する、同課 スペシャリストの松本氏は、次のような理由も大きかったと語った。
「当時は、BOMをデータ管理しておらず、紙に書かれた部品リストを一旦Excelに落とし込み、各部品のコスト情報と突き合わせてコストシミュレーションを行っていました。その手間を省き、且つ、数パターンのコスト情報を突き合わせられる仕組みが欲しかったということもありますね。」
その後、要件定義、システム構築、テスト、社内教育のプロセスを経て、2016年10月、Visual BOM は稼働を開始した。Visual BOM の稼働については、エンドユーザーの大きな抵抗もなく速やかにできたという。
「システムの選定段階から、(エンドユーザーとなる)各部署の代表者にプロジェクトへ参加してもらいました。システムをより使いやすくするためのカスタマイズ仕様の決定に関わってもらうなど、「自分たちで作り上げたもの」という意識を持ってもらえるようにしました。そして、リリース時には、操作説明会をまず代表者に行ったのち、各部署のメンバーには代表者から説明してもらうようにするなど、主体的に取り組んでいただいたことで、スムーズに運用開始できました。」(指田氏)
企画設計生産本部 プロダクト業務推進部 業務企画課 主査 田中 真人 様
設計業務の効率化だけでなく、開発購買の促進・定着にも貢献
Visual BOMにより、同社では、従来の図面管理システムで抱えていた課題を着実にクリアしている。
検索に関しては、品番に関連する資料が容易に探せるようになったことはもちろん、品番や品名でしか図面が探せなかった状況から、図面サイズ、設計担当者、承認者、素材、などの情報から探せるようになり、検索性が大きく向上したという。
また、設計変更を生産側に通知するワークフローも、2~3日かかっていた状況から、「変更しますというインフォの数時間後には、もう図面が(生産側に)行っている」(田中氏)と、従来のリードタイムが大幅に改善されたとのことだ。
加えて、開発購買の促進・定着に寄与する仕組みも実現できたという。
「従来は、設計側でコストシミュレーションした結果と、実際に作ろうとしたときのコストが合わなかったとき、すでに手遅れとなっているような状況が間々ありました。これを解消するために、試作段階から開発と調達の部隊が一緒にコストの見積りをする取り組みは始めていたのですが、見積りするための試作図面のやり取りが膨大であったり、見積結果を全体でとりまとめて集計するのに苦労する状況でした。Visual BOM導入によって、試作図面のやりとりもスムーズになり、発注単価や見積単価などをVisual BOMにフィードバックすることで、誰でも精度の高いコストシミュレーションができるようになりました。」(指田氏)
検索に関しては、品番に関連する資料が容易に探せるようになったことはもちろん、品番や品名でしか図面が探せなかった状況から、図面サイズ、設計担当者、承認者、素材、などの情報から探せるようになり、検索性が大きく向上したという。
また、設計変更を生産側に通知するワークフローも、2~3日かかっていた状況から、「変更しますというインフォの数時間後には、もう図面が(生産側に)行っている」(田中氏)と、従来のリードタイムが大幅に改善されたとのことだ。
加えて、開発購買の促進・定着に寄与する仕組みも実現できたという。
「従来は、設計側でコストシミュレーションした結果と、実際に作ろうとしたときのコストが合わなかったとき、すでに手遅れとなっているような状況が間々ありました。これを解消するために、試作段階から開発と調達の部隊が一緒にコストの見積りをする取り組みは始めていたのですが、見積りするための試作図面のやり取りが膨大であったり、見積結果を全体でとりまとめて集計するのに苦労する状況でした。Visual BOM導入によって、試作図面のやりとりもスムーズになり、発注単価や見積単価などをVisual BOMにフィードバックすることで、誰でも精度の高いコストシミュレーションができるようになりました。」(指田氏)
企画設計生産本部 プロダクト業務推進部 業務企画課 スペシャリスト 松本 俊一 様
さらに、Visual BOMの主な機能である類似形状検索をSOLIDWORKSから呼び出せるようにして、設計段階で次のような使い方ができるようにしているとのことだ。
「作図しているものと似ている部品を検索し、見つかった部品のコストが500円であれば、”穴を1つ増やしたら520円くらいかな”と予想が付くようになったと思います。また、例えば、見積り経験の浅い若手が、500円くらいの部品を間違って2,000円といった予測をしなくなります。」(田中氏)
最後に、今後の展望やVisual BOMへの要望を、インタビューに答えていただいたお三方に伺った。
「RPAとの連携です。コストシミュレーションの結果だけを毎日知りたい人には、毎日変動するゲーム機のコストをVisual BOMから取得し、それをExcelに落とし込んでメール通知するとか。あとは、CADとの連携強化です。例えば、回路図CADで設計中、過去に問題のあった部品を使用したら、”過去にこんな問題が起きたよ”と知らせるなど、そのくらいの連携性を持たせたい。」(田中氏)
「旧品番のみ持つ古いデータなど、従来システムから移行できなかったデータが少なからず存在します。ほとんど使うことはないのですが、会社の資産であることに間違いはないので、これらデータを検索したり、うまく活用したりする機能があると嬉しいです。」(松本氏)
「3Dデータがせっかくあるのにまだ十分活用できていないと感じています。また、部品メーカーにデータの引き渡しをする際、紙の図面と違う3Dデータを送ってしまうといったこともありました。きちんとシステムで管理して、このような間違いが起きないようにしたい、というのが、Visual BOM導入時の狙いとしてありましたが、まだ道半ばです。」(指田氏)
※本記事はPDFでもご覧いただけます。( PDFのダウンロードはこちら )
「作図しているものと似ている部品を検索し、見つかった部品のコストが500円であれば、”穴を1つ増やしたら520円くらいかな”と予想が付くようになったと思います。また、例えば、見積り経験の浅い若手が、500円くらいの部品を間違って2,000円といった予測をしなくなります。」(田中氏)
最後に、今後の展望やVisual BOMへの要望を、インタビューに答えていただいたお三方に伺った。
「RPAとの連携です。コストシミュレーションの結果だけを毎日知りたい人には、毎日変動するゲーム機のコストをVisual BOMから取得し、それをExcelに落とし込んでメール通知するとか。あとは、CADとの連携強化です。例えば、回路図CADで設計中、過去に問題のあった部品を使用したら、”過去にこんな問題が起きたよ”と知らせるなど、そのくらいの連携性を持たせたい。」(田中氏)
「旧品番のみ持つ古いデータなど、従来システムから移行できなかったデータが少なからず存在します。ほとんど使うことはないのですが、会社の資産であることに間違いはないので、これらデータを検索したり、うまく活用したりする機能があると嬉しいです。」(松本氏)
「3Dデータがせっかくあるのにまだ十分活用できていないと感じています。また、部品メーカーにデータの引き渡しをする際、紙の図面と違う3Dデータを送ってしまうといったこともありました。きちんとシステムで管理して、このような間違いが起きないようにしたい、というのが、Visual BOM導入時の狙いとしてありましたが、まだ道半ばです。」(指田氏)
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