Case study
導入事例

Knowledge Explorer

総合建設会社のナレッジ活用事例(株式会社熊谷組)

創業120年余、日本建設業界の老舗企業である株式会社熊谷組では、情報の共有・活用を円滑に進めるため、2020年に図研プリサイトのフルオート型ナレッジ活用ソリューション「Knowledge Explorer」を導入した。Knowledge Explorerは、ユーザーが作成中・参照中の文書をAIで自動解析して、社内に蓄積されたデジタル文書の中から関連資料をピックアップする機能を搭載している。

そうしたKnowledge Explorerの機能は、建設業界の業務をどのように支援しているのだろうか。株式会社熊谷組 土木事業本部 ICT推進室 担当課長 天下井 哲生氏に話を聞いた。
  • 株式会社熊谷組 土木事業本部 ICT推進室 担当課長 天下井 哲生氏 その1

お客様の企業プロフィール

会社名 株式会社熊谷組
本  社 〒162-8557 東京都新宿区津久戸町2-1
事業内容 建設工事の調査、測量、企画、設計、施工、監理、技術指導その他総合的エンジニアリング、 マネジメントおよびコンサルティングならびに請負など
お話を伺った方

土木事業本部 ICT推進室 担当課長
天下井 哲生 様

(取材年月日:2020年11月27日)


採用いただいたソリューション
Knowledge Explorer

建設テックを推進する熊谷組 ICT推進室

昔は3K(きつい・汚い・危険)といったイメージを持たれがちだった建設業界だが、昨今では安全で魅力的な労働環境の整備が進められている。2015年には、国土交通省が建設現場の生産性向上を目指す取り組みとして「i-Construction」を発表し、ICT活用を後押ししている。

熊谷組の土木事業本部にICT推進室が新設されたのも、この「i-Construction」に呼応してのことだった。主な業務には、関連情報の収集、ICT技術の開発・展開、CIM(Construction Information Modeling / Management)の推進、デジタル化時代に合わせた人材育成などがある。最近では、トンネル工事の切羽面(掘削面)の画像をAIで診断し、支保工(掘削中の支え)の組み方を検討するシステムの導入・現場展開に携わったり、人が立ち入ることが危険な災害現場で、重機を遠隔操作して復旧工事を進める「ネットワーク対応型無人化施工システム」(土木学会技術賞、国土技術開発賞受賞)の高度化を行ったりと、土木現場の安全性や生産性向上に貢献している。

膨大なデータ管理の難しさと、ベテラン社員の退職により継承されないノウハウ

現場での先進技術導入が進む一方で、社内では日々蓄積される膨大な資料をICTでどう活用すべきかが課題になっていた。

「現場1カ所につき、図面や写真、関連書類などが1TB(テラバイト)ほど発生しますが、それらは現場単位で保管されていて、うまく共有する仕組みがありませんでした。ストレージサービスなどを導入してみたものの、現場に浸透せず、全体的な情報共有にはあまり効果がなかったのです」(天下井氏)

完工プロジェクトの資料についてはデータをディスクにまとめて本社で保管しているため、たとえば新規の現場に類似した実績を検索して参照することは可能だ。だがここに保存されているのは膨大な資料のうちの一部にすぎず、入力するキーワードが資料の内容と完全一致しなければヒットしないこともある。

また、資料が見つけられず、当時の担当者に話を聞こうとしても、当時の担当を突き止めるのに時間がかかったり、担当者が既に退職していたりするケースもある。というのも建設業界は1990年代に発生したバブル崩壊の影響もあって、中間層の社員の少ない企業が多い。熊谷組も大別すればベテラン社員と若手社員で構成されており、言わば世代間ギャップによるコミュニケーション不足が引き起こす課題に直面していた。

「ベテラン社員の退職により、どのような資料がどこに保存されているかを把握することが課題となっています。今のうちに過去の事例のデータベースをしっかり作り、継承していくことの必要性を強く感じていました。しかし資料は本社や支店に散在しているので、まとめようとするだけでも大変な作業になってしまいます」(天下井氏)
  • 株式会社熊谷組 土木事業本部 ICT推進室 担当課長 天下井 哲生氏 その2
土木事業本部 ICT推進室 担当課長 天下井哲生 様

44万件以上の埋蔵データを現場で活用できるデータへ

こうした課題への解決策に悩む中、AI技術開発で交流のあった企業から紹介されたのが、Knowledge Explorerだった。

Knowledge Explorerを使えば、社内のPCやサーバに保存されたさまざまな種類のファイルから、必要なものを簡単に抽出できる。テキストデータが埋め込まれたファイルであれば、ナレッジ検索の対象になるので、従来のデータベース検索のように完全一致のキーワードでなくてもヒットしやすくなる。散在するデータを人の手で収集・分類しデータベース化する作業も不要だ。

土木技術統括部と本社で数週間の検証を行ったあと、2020年1月にKnowledge Explorerの採用が決定し、同年4月には図研プリサイトの協力のもと、本社と支店での利用が開始された。専用のサーバにKnowledge Explorerをインストールし、簡単な設定を行うだけで、従来は各拠点で共有されていた44万件以上のファイルを横断して活用できる仕組みが整った。
  • 検索キーワードに加えて、作業中の文書と検索結果の関連性をAIが評価するため、膨大なデータの中から、目的の資料を容易に見つけ出すことができる。
検索キーワードに加えて、作業中の文書と検索結果の関連性をAIが評価するため、膨大なデータの中から、目的の資料を容易に見つけ出すことができる。
「操作も簡単なので、誰でも1~2日で基本的な使い方を習得できます。現在は150名ほどが利用しています」(天下井氏)

同社では、新規に施工計画書を作成する際、過去の類似事例を参考にしたり、技術やアプローチ方法などの実績を検索して、進行中の案件に活かしたりするのに役立てているという。

過去の資料が見つかりやすくなったことで、若手社員とベテラン社員間のコミュニケーション活性化につながるのではないかと、副次的な期待が寄せられているという。「かつて私も親子ほど年齢の離れた先輩とのコミュニケーションに難しさを感じたことがありました。しかし過去の資料をきっかけにやりとりが活発になることで、世代が離れていても意見を交わしやすくなり、知見や技術の継承がより円滑に進むかもしれません」(天下井氏)

AIによる関連資料の通知機能で論文執筆も円滑に

必要とする情報をAIがピックアップをしてくれることが、Knowledge Explorerの大きな特長だ。ユーザーが作成・閲覧中の文書をAIが解析し、社内に蓄積されたファイルから、関連した記述がある資料をピックアップして、プッシュ通知してくれる。

熊谷組ではこれを学会で発表する論文の執筆時に利用しているとのことだ。ファイルサーバに保存されている数千の建設関連論文から、執筆中の論文に関連する文章をKnowledge Explorerが抽出・要約して通知してくれるため、事前の調査時間を削減できたり、最新動向を論文に盛り込んだりすることができる。また、執筆者が存在すら知らなかった資料をAIが拾い上げてくれることで、新たな気付きを得られることもある。
  • AIが参考文書をピックアップして自動提示する「プッシュ通知」機能により、自身では知り得なかった情報に気付くことができる。
AIが参考文書をピックアップして自動提示する「プッシュ通知」機能により、自身では知り得なかった情報に気付くことができる。
「私も最新技術に関する情報収集にこの機能を利用しています。以前は論文をひとつずつあたったり、ネットで調べたりしていたのですが、今では社内に存在している情報であれば瞬時に参照できるので、作業時間は1/10くらいになりました」(天下井氏)

論文の執筆・発表が円滑に進めば、同社の技術力をアピールできるようになる。さらに論文によって先進的な知見を広く外部に公開することは、同社の社会貢献度を高めることにもつながるだろう。

概算の把握や安全教育など、さまざまな用途を検討中

さらにICT推進室では、外注先の見積書をKnowledge Explorerで比較・分析し、プロジェクトごとの工事原価の概算把握に役立てたり、現場の安全教育に利用したりなど、Knowledge Explorerのさらなる活用方法を検討している。

「各現場では毎月、安全に対して注意喚起を行う『安全大会』を実施していますが、Knowledge Explorerで最新の災害事例の資料を提供し、より具体的な安全教育を実施したいと考えています」(天下井氏)

円滑な情報共有・収集・分析の実現により、熊谷組が長年培ってきた技術やノウハウが末永く継承されれば、同社の発展のみならず、建設業界全体の活性化を促すことになるだろう。
  • 株式会社熊谷組 土木事業本部 ICT推進室 担当課長 天下井 哲生氏 その3
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