Case study
導入事例

Knowledge Explorer

製薬会社のナレッジ活用事例(大鵬薬品工業株式会社)

企業内に蓄積されたドキュメントは会社の大切な資産であり、業務を効率よく進めるための知見・知識の宝庫でもある。しかし、増え続ける膨大なドキュメントの中から必要な情報だけを探し出すのは難しいもの。せっかくの資産を有効活用できず、悩んでいる企業も多いのではないだろうか。

 

図研プリサイトの「Knowledge Explorer」は、そんな社内ドキュメントを自動解析し、用途別辞書を作成することで、文書作成に必要とされる知見を瞬時に引き出せるフルオート型ナレッジ活用ソリューションだ。WordやExcel、PowerPointのアドオンとして動作するため、既存環境を変えずに導入できるのもポイント。

 

本稿では、実際にKnowledge Explorerを導入した大鵬薬品工業のCMC※本部に伺い、導入の経緯と効果を聞いた。製剤研究のために数多くの資料や文書を取り扱う製薬会社の事例から、Knowledge Explorerの特徴を探っていきたい。

 

※:Chemistry, Manufacturing and Controlの略称

お客様の企業プロフィール

会 社 名 大鵬薬品工業株式会社(TAIHO PHARMACEUTICAL CO., LTD.)
本  社 東京都千代田区内神田 1-14-10 PMO 内神田ビル2階~9階
設  立 1963年(昭和38年)6月1日
従業員数 2,410名 (2017年12月31日現在)
資 本 金 2億円
お話を伺った方
CMC本部 製剤研究所 博士(薬科学)楠本憲司氏
CMC本部 CMC企画戦略部 川西宣彦氏

(取材年月日:2018年9月5日)

採用いただいたソリューション
Knowledge Explorer

研究開発に加え、文書作成にもノウハウを必要とするCMC本部

大鵬薬品工業は、医薬品の研究開発で名高い日本の製薬会社だ。特に抗がん剤の開発に注力しており、経口抗がん剤「ロンサーフ」は、進行・再発の結腸・直腸がんの治療薬としてグローバル展開し、60ヶ国以上で承認を取得している。一般向け医薬品としては「チオビタ」や「ソルマック」などの製品が有名だ。

同社がKnowledge Explorer(当時の製品名は「Knowledge Concierge」)の導入を検討したのは2016年のこと。導入を推進したのは、当時CMC本部内の異動により製剤研究所から分析科学研究所に配属となった楠本憲司氏だ。

同研究所は、臨床試験に使用する製剤の有効性・安全性を保証する品質基準を設定するための試験方法を開発している機関だ。また、品質管理戦略を構築し、他部署と共に医薬品の承認申請なども行っている。多数の開発品目を抱えており、一つの医薬品を開発・販売するまでに10年以上要することもある。そのため、計画書や報告書、マニュアルといった社内資料も膨大な数になり、関係者の異動や退職のたびに当時の資料を探す作業に多くの時間を割かれていた。
  • 大鵬薬品工業 CMC本部 製剤研究所 博士(薬科学)楠本憲司氏
大鵬薬品工業 CMC本部 製剤研究所 博士(薬科学)楠本憲司氏
「5年、10年前の資料を探すことも少なくありません。分析科学研究所では、日本薬局方の表現に合わせた文書を日々作成しており、計画書や報告書、マニュアル、会議資料などに使用する書式、文言、用語がある程度決まっています。文書作成にはノウハウが必要なため、過去の文書を参考にしたり雛形として利用することが効率的です。また、過去に数多くの試験法開発が実施され、そのノウハウが蓄積された資料が多数存在しているため、過去の適切な資料を見つけることが試験法開発の効率化につながります。しかし、異動したばかりの時は該当する文書がそもそも存在しているのかも分からず、直接人づてに確認するなど、多くの時間を費やしていました」と、楠本氏は異動直後の悩みを話す。

このような知識・知見は、これまで暗黙知・形式知として人づてで更新を繰り返しながら継承されてきたという。しかし、属人化された知識は業務の遂行や移行を妨げる原因となる。また、単純な時間的ロスだけでなく、教える人、教えてもらう人の知識量や人間関係も情報伝達に影響を与えてしまう。

このような業務フローを改善するためのナレッジマネジメントを探しているとき、とあるセミナーで楠本氏が出会ったのがKnowledge Explorerだった。関心を抱いた楠本氏は、同社CMC本部CMC企画戦略部の川西宣彦氏とともに検討を開始する。

「業務時間の削減や確実な情報共有は大きな課題でしたから、私の方でもナレッジマネジメントの必要性を感じていました。そんなとき楠本が、Knowledge Explorerの情報を持ち帰ってきたのです。話を聞いて『ぜひ採用をしたい』と考え、まずはデモを要望しました」(川西氏)

こうしてKnowledge Explorerは、3ヶ月の検討の後テスト導入された。その後3ヶ月ほどの試運用を経て、その効果を実感した川西氏は正式導入を企画。さらに3ヶ月をかけてキッティングから検証が行われ、現在ではCMC本部のほぼ全員がこのソリューションを利用している。

プロジェクトマネジメントの向上にも寄与

Knowledge Explorerには大きく分けて2つの使い方がある。1つ目は、検索したい文言を入力し、該当する文書を表示させるという、“既知”の用語で探す「プル型」の使い方。2つ目は、作成中のドキュメントを自動解析し、関連する文書を自動提示する、“未知”の情報を引き出す「プッシュ型」の使い方だ。CMC本部では業務内容が部署ごとに大きく異なるため、主に前者の方法で利用している。実際に2年間利用した楠本氏は、Knowledge Explorerの導入効果を次のように語る。

「人に聞かなくても何万という資料の中からすぐに資料を探し出せる点や、共通の資料にアクセスできるという点は大きなメリットです。また、検索のたびに辞書が更新され優先順位が変わっていくため、使いこむほど必要な情報が上位に表示される確率が向上します。やみくもに情報を引っ張ってくるだけのシステムより、早く正確に情報へアクセスできると感じました」
  • 大鵬薬品工業 CMC本部 CMC企画戦略部 川西宣彦氏
大鵬薬品工業 CMC本部 CMC企画戦略部 川西宣彦氏
楠本氏は実際の検索ワードとして、製剤名や溶解度、試験方法などを挙げる。“ 週報”や“月報”といったキーワードをマイナス(not) 検索すれば、さらに確実性が向上するそうだ。これまでは最新の情報を知っている人に聞くしかなかったことを、瞬時に探し出せるようになったのは大きなポイントだ。

「従来ですと、目的のドキュメントにたどり着くまで30分程度の時間を要すこともありました。仮に、1日1回検索を行ったとすると、その時間はわずか2~3分ですみますので、日々の業務効率改善に大いに役立っています。また、CMC本部で導入後のアンケート調査を行ったところ、『かなり必要』と回答した割合が10%、『必要』は40%、『どちらともいえない』が34%という結果が得られました。まだ、使い方も浸透していない段階で半数以上の方が必要なソリューションと答えてくれたのは、目に見える効果だと思います」(川西氏)

また、プロジェクトの最新情報を把握しやすくなったという効果も生まれた。その理由は、文書を保存した時点でラベルが張られ、辞書が自動更新されるためだ。Knowledge Explorerは業務効率を上げるだけでなく、プロジェクト全体のスピードアップにも貢献する可能性が秘められているというわけだ。

製薬会社にとって重要なセキュリティ

CMC本部がKnowledge Explorer導入時に気を配ったもう1つの点がセキュリティだ。国際的な研究競争を行う製薬会社にとって、研究に関する情報は何よりも大事なもの。情報漏えいは常に懸念材料となり、大鵬薬品工業のセキュリティも非常に厳しい。
Knowledge Explorerはこの点でもCMC本部の需要を満たしている。ファイルやフォルダごとに閲覧できる権限を設定でき、権限のない文書は検索しても表示されない。アクセス権のみならず、検索結果表示に対しても役職に応じた対応が可能だ。

「見えてはいけないものが見えないというのは非常に重要です。一方で、アクセス権限がかかっているが、存在するのはわかるというのも良い点です。その情報がどうしても必要であれば、アクセス権を持っている人に申請するという手段が取れますからね」(楠本氏)

また導入時に重要となるコストについても、CMC本部は厳密なシミュレーションを行っていた。テスト導入時に検索回数を記録し、1回の検索にかかるコストを試算。結果としてリーズナブルな価格で継続運用できると判断したという。
「当初はアクセス権周りで細々としたトラブルもありましたが、図研プリサイトさんには誠実なご対応を頂けました。要望なども遠慮なく言わせていただけた結果、今にいたっているのかなと思います」(川西氏)

Knowledge Explorerへの要望と期待

業務改善、セキュリティ、コストの3点において、大鵬薬品工業CMC本部の需要を満たしたKnowledge Explorer。現在はCMC本部のみで使用されているが、今後は横への展開も検討しているという。他の部署や他拠点でも利用し、会社全体としての知見共有の幅を広げることも構想しているのだ。
最後に、大鵬薬品工業のお二人はKnowledge Explorerへの要望を、期待をこめて次のように語った。

「検索のコツがわかれば素早く必要な文書を絞り込める一方で、はじめて利用するユーザーには多少の啓発が必要です。今後の他部署への横展開を考えると、仕様やUIなどがいまよりユーザーフレンドリーになれば、今後さらに使用する人が増えるのではないかと思います(川西氏) 

「現在は主にプル型の検索をしていますが、プッシュ型の検索も活用したいですね。製薬という特殊な業界ですので現在は有効に使えていませんが、次期バージョンでは学習済みAIを用いて、より精度の高いプッシュ型検索が行えると聞いています。こちらでも要望をあげていきますので、更なる改善を期待したいと思います」(楠本氏)


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