Case Study

導入事例
2026.08.20 Visual BOM

ラティス・テクノロジー×PreSight:トップ対談~データがつなぐ次世代モノづくり―【後編】AIで変わるモノづくりとPLMの進化

2026年に発刊された書籍『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画〈実践編〉』では、PLMを中心に据えた次世代モノづくりの姿が示されました。そのキーワードとなるのが、設計・製造・実績情報をつなぐデータ活用とAIです。

設計から現場へ、そして現場から設計へ。モノづくりの現場で蓄積される膨大な情報を循環させることで、より良い製品開発や意思決定につなげていく――。そんな未来像に向けて協業を続けるラティス・テクノロジーと図研プリサイト。

後編「AIで変わるモノづくりとPLMの進化」では、ラティス・テクノロジー代表取締役の鳥谷様と図研プリサイト代表取締役社長の小田、書籍でAIについて執筆した図研プリサイト営業部長の倉本も交えてAIがもたらすモノづくりの変革について語りました。

前編「PLMを軸にした設計・製造連携の進化」はこちらをご覧ください。

登壇者写真

登壇者 ※役職は対談当時の肩書です

右:ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役 鳥谷 浩志 様

中:株式会社図研プリサイト 代表取締役社長 小田 泰久

左:株式会社図研プリサイト 営業部長 倉本 将光

PLMにおけるAI:「AI-Ready」と「活用」

鳥谷:
今回リリースされたAI実装版(Visual BOM V6.2)についてもお伺いしたいです。

小田:
ここからは当社の倉本にも参加してもらいましょう。

倉本:
倉本です。改めましてよろしくお願いします。
AIについては「AI-Ready」と「活用」という2つの軸で考えています。たとえば、Visual BOMには、もともとラティスさんと一緒にやってきた「3D類似形状検索」がありますが、今回は2Dの類似図面検索も搭載します。
ここで大事なのは、「2D図面も検索できます」ではなくて、「3D設計をもっと加速させるために、過去の2D資産も候補として出せるようにする」ということです。過去に2Dしかなかった時代の資産も活かせるようにしたい。そこが狙いです。

鳥谷:
AIを使用して2D図面から3Dデータを起こすような話も最近はいろいろ出ていますよね。2D資産の最大限の活用ということではそのような方向性もあると思います。

倉本:
そこは我々も興味があって、2D→3D変換の技術を持ったスタートアップの方に話を聞いたり、実際にPoCをしたりしたこともあります。ただ、正直まだ難しいかなというのが現時点での感触です。
単品部品だったら何とかなるかもしれませんが、構成、つまりアセンブリまで再現するとなると、ただ形を起こすだけでは全然足りません。
Visual BOM上で表示されているXVLの良さは、アセンブリのデータを一度パーツ単位にばらした上で、再構成して表現しているところにあるので、そこまでやらないと活用の範囲に制限が生じるのです。
もし2Dから品目情報や構成まで含めて3Dデータ化できるなら可能性はあるかもしれません。

対談の様子1

鳥谷:
AIの活用という意味では、やっぱり全部自動化というより、一部を補助するような形が現実的ということでしょうか。

倉本:
そのとおりです。10,000点のパーツのうち99%が正しくても、1%でも間違っていたら実務では使えません。探して直すコストが大きすぎるためです。
だから、全部をAIに任せるのではなく、一部の判断を助ける、あるいは人が頭の中でやっていたことをそのまま計算させる、という方向が現実的と考えています。
たとえば形状データから距離や面積を出して溶接長を見積もりに使う、そういうことはかなり現実味があります。人が頭の中でやっていたものを、計算ロジックとして落とし込む感じです。

小田:
もう一つの方向性としては、要求仕様から構成案を出すことですね。自然言語で要求が入ってきたときに、過去のBOMや図面、BOP、トラブル、リードタイム、そういった情報をもとに複数の構成案を出して、QCDで評価する。しかも、製造~出荷までの制約条件、つまり正味の処理能力まで加味する。さらに、その構成案を採用するときのリスクや注意点も一緒に出す。
ここでAIが責任を取るわけではなくて、最終的には人間が選ぶのですが、選ぶための材料をそろえる、というのが狙いです。

データが意思決定を高度化する:ログ・品質・ナレッジの活用

鳥谷:
そのときに重要になるのはログデータですよね。誰がどう判断したかまで含めて、後で使えるようにする必要がありそうです。

倉本:
そのとおりですね。誰がどれを採用したか、その後どうだったか、そういう履歴自体がナレッジになります。
ある人がOKを出したものと、別の人がOKを出したものとでは信頼度が違う、ということもあり得ます。当社のナレッジマネジメントシステム、Knowledge Explorerも単に情報を取ってくるだけではなく、「この人が参考になったと言っているなら見てみよう」というような使い方ができるように開発してきました。
そうすると、ログ情報はかなり活用できます。逆に、ログがないとAIの判断にも根拠が持てません。

小田:
最近は、メダリオンアーキテクチャという考え方も意識しています。Bronzeが生データ、Silverがクレンジングしたデータ、Goldが目的に合わせて加工した意思決定用データ。
PLMの中でも、これを意識していく必要があると思っています。ログやチケット、議論の履歴はBronzeで、そこから整形・統合してSilverにし、最終的に品質やコストダウン、次の企画などに使えるGoldにしていく。PLMにはその各段階で機能が必要です。データがなくてもAIは使えるという言説もありますが、我々としてはやはりブロンズとなる生データが必要だと考えています。

メダリオンアーキテクチャのイメージ

倉本:
その流れの中で、今回Visual BOMの最新バージョン(V6.2)には、チケット管理の機能も入れています。
ソフトウェア開発だと、解決すべき問題が発生した際にチケットベースでやりとりを行うのは普通ですが、PLMでは意外とそういう「やりとり」が残ってこなかった。設計変更理由のような固い情報はあっても、どういう会話があって、なぜその判断になったのかというコミュニケーションデータが抜けていたのです。
そこを残せるようにする。あるいはSlackなどPLM以外のツールで行ったコミュニケーションの情報を取り込んで、設計資産と一緒に残す。そうすると、あとから見返したときに「なぜこうなったか」が分かるようになります。

鳥谷:
品質情報や実績とつなぐと、「この部品、実はトラブルまみれだった」とか、これまででは見えてこなかった事実も見えてきますね。

倉本:
ええ、そのとおりです。今、鳥谷さんがおっしゃったように、属性情報だけで見ればコストも安い、納期も短い、だから一見良さそうに見えても、実は「品質には留意が必要だった」という部品もある。だから、たとえば流用設計の際、候補を選ぶときに過去トラ情報まで見たいはず。以前より流用元のBOMをQCDの各項目で健康診断するような機能は提供してきましたが、もっとやわらかい形で「近いところで何か起きていないか」を見に行けるようにしたいと考えています。
そこを3Dの色分け等で直感的に見せるなど、達人が図面を見て危なさを感じるようなことを、できるだけ誰でも見えるようにしたい。しかも最終製品だけでなく、工程フローや中間アセンブリの中で、どこが危ないかも見えるようにしていきたいと思っています。

小田:
工程フローそのものを色分けして、「今回はここが危なそうだよ」と見せられたら面白いですね。モノづくりの現場だと、設備の赤・黄・緑の信号灯はもう直感的に伝わりますよね。だから、BOPの世界でも、危険なところや注意すべきところがひと目で分かるようにしたい。さらに、もし実績収集や問題管理と連携できれば、問題が起こりやすいところや時間が掛かるところで、作業者に暫定的に注意を促すこともできるかもしれない。そこは技術的にまだこれからですけれど、実際の行動を変えるところまで持っていきたいのです。

対談の様子5

鳥谷:
通知の出し方もいろいろありそうですね。光らせるだけではなくて、どこでどう見せるか。i-Reporterのトップ画面であったり、XVL Web3D Managerの画面であったり。

小田:
そうですね。通知の仕方は検討が必要ですが、重要なのは「気づかせる」ことだと思っています。たとえば、ある工具を別のものに変えたことで、実は不要になっている工程がまだ残っている、みたいなことがあります。
こういうケースではBOPまで持っていないと気づけません。どこの工場ではまだこの工具、別の工場では違う工具、という違いもあるので、そこをデータとして持って、工程の意味を見直せるようにしたい。

倉本:
あと、貴社のXVL側のAIの話でいうと、最近はXVL Studio SDKを公開されていますね。

鳥谷:
XVLデータがたまってきたので、それをもっと活用したいというお客様が増えてきました。XVL Studio SDKでは、API経由でPythonから3Dに対するいろいろな処理、たとえば3Dデータ上で体積を自動計算するなど、できるようになっています。ただ、Pythonでプログラム書けないと使えない。そこで自然言語で指示したら、AIがその処理を書く、という方向の開発も進めています。
ところが3Dという話で言うと、部品同士の干渉もチェック箇所が10,000箇所あったとして、本当に見るべき300個をどう絞るか、というような話があります。3Dの形状が絡むと問題が複雑すぎて、AIだけで一気に全部解くのは現状では難しいです。だから、当社も活用するにあたって、まず3Dのアルゴリズムで問題の60%を解き、残り40%をAIや人が詰める、というようなアプローチになりそうです。

対談の様子4

小田:
一方で、AIの良さは数学的アプローチで人間の思い込みを外すことだと考えています。人はどうしても過去のやり方や、自分たちの知っている範囲で考えてしまう。でも、AIはそういう前提の外からパターンを出してくることがある。
たとえば先日の対談(プラーナー様と鳥谷様対談)であった、「人間は直線的な設計が好きだが、AIは極限まで肉を落とした設計ができる。そのうえ機械での加工性はどちらも差はない」というのはまさにそれを感じました。

倉本:
だから、類似構成検索のようなものも、単に部品が似ているという話ではなくて、「後工程まで考えたときにこちらの構成のほうが、都合がいい」といったところまで根拠として提示できるかもしれない。

小田:
もちろん、外してはいけない制約条件はあります。たとえば、E-BOMの類似度だけで判断しても、この工場のこの工程って今も同じように使えるのかな?だとか、現実的な制約はあります。その範囲の中で思い込みを外していく。そこは今まさにやっているところです。
品質や安全性を含めた工程能力など、そういった制約はきちんと持ったうえで、どのような条件であればこれが最適、というような見せ方になるかなと思います。そこから壁打ちしていくのかなと。

鳥谷:
AIが選択肢を示し、人間がAIと対話しながらその精度を高めていく。まさに2026年現在のAIの使い方ですね。

倉本:
繰り返しになりますが、AIは最終的な責任を取ってくれないですからね。その責任を取る人間が最終的に選ぶ、そのための判断材料をAIがそろえるというのが良いと思っています。我々は意思決定の高度化、なんて表現していますけれども。

鳥谷:
なるほど。意思決定の高度化ですか。これを実現するには、データをためるだけではなくて、その先の「判断そのもの」をどう扱うかが大事になりますね。判断するための情報をどう蓄積するかということでしょうか。

倉本:
まさにそこが重要だと思っています。
これまでのPLMは、「情報をどう蓄積するか」という観点が中心でした。設計データ、BOM、実績、品質情報といったものを資産として残していく、いわば“情報の資産化”です。
ただ、その先にあるべきなのは「判断の資産化」だと考えています。
つまり、誰がどんな状況で、どの選択肢を選び、その結果どうだったのか——そういった意思決定そのものをデータとして扱えるようにすることです。

鳥谷:
たしかに、先のログや履歴活用の話ともつながってきますね。

倉本:
はい。誰が選んだか、その判断がうまくいったのか失敗したのか、そこまで含めて扱えるようになって初めて、次の意思決定に活かせます。
単なる情報の検索ではなく、「どう判断すべきか」という観点でナレッジを引き出せる状態ですね。
そのときにAIが果たす役割は大きいと思っています。
その結果として、
「なぜこの判断をしたのか」
「他にどんな選択肢があったのか」
ということまで含めて記録されていけば、次のプロジェクトでは、その判断自体が再利用できる。
これが“判断の資産化”であり、そのプロセスを「意思決定の高度化」と呼び、PLMを最大限活用するための重要項目と捉えています。

鳥谷:
今日はいろいろなお話をしてきましたが、最終的に、「モノづくり領域におけるAIの活用」というテーマにかなり近づいてきた感じですね。台本なしの完全なフリートークでしたけど。(笑)

小田:
鳥谷社長のモノづくりに対する知見の深さと「3Dで世界を変える」という想いに引っ張っていただきました。(笑)
今日はかなりフリーに発言しましたが、書籍の背景から今後の構想までお話できたかなと思います。昨今は、先進的な3D要素を含む案件がますます多くなってきました。これらも貴社と一緒に進めていければと思います。今日はありがとうございました。

対談の様子4

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