ラティス・テクノロジー×PreSight:トップ対談~データがつなぐ次世代モノづくり~【前編】PLMを軸にした設計・製造連携の進化
2026年に発刊された書籍『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画〈実践編〉』では、PLMを中心に据えた次世代モノづくりの姿が示されました。そのキーワードとなるのが、設計・製造・実績情報をつなぐデータ活用とAIです。
設計から現場へ、そして現場から設計へ。ものづくりの現場で蓄積される膨大な情報を循環させることで、より良い製品開発や意思決定につなげていく――。そんな未来像に向けて協業を続けるラティス・テクノロジーと図研プリサイト。
今回は前編「PLMを軸にした設計・製造連携の進化」、後編「AIで変わるモノづくりとPLMの進化」の2テーマに分けて掲載します。前編では、ラティス・テクノロジー代表取締役の鳥谷様と図研プリサイト代表取締役社長の小田が、「PLMを軸にした設計・製造連携の進化」をテーマにVisual BOMと3Dデータ活用の現在地、現場実績を生かしたデータ循環の可能性について語りました。

登壇者 ※役職は対談当時の肩書です
右:ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役 鳥谷 浩志 様
中:株式会社図研プリサイト 代表取締役社長 小田 泰久
左:株式会社図研プリサイト 営業部長 倉本 将光
書籍発刊の背景とPLM中心の思想
鳥谷:
この度は『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画〈実践編〉』の発刊、おめでとうございます。
小田:
ありがとうございます。3月の発刊後、ご報告のため書籍を送付させていただいたところ、鳥谷社長より対談を発案いただき本日を迎えました。先だっての両社開発責任者同士の対談に続く第2弾として、書籍の内容も踏まえ、より踏み込んで実績情報やAIといったトピックにも触れられればと思っております。本日もよろしくお願いします。
鳥谷:
よろしくお願いします。私も書籍は読ませてもらいました。今回はどのような経緯で書籍の発刊が決まったのでしょうか?前作の続編ですよね?
小田:
はい、その通りです。前作は2019年に発刊しております。もともと、著者である株式会社プリベクトの北山さんというコンサルタントの方、ビジネスエンジニアリング社、および当社のメンバーを含めた3社で共同セミナーを実施していました。その内容が好評だったため、書籍化したものです。
鳥谷:
前作は重版が何度かかかり、製造業界では、まさしくベストセラーの一冊ですよね。我々のお客様でも読まれている方が非常に多いです。
小田:
ありがとうございます。おかげさまで重版出来、たしか7年間で六刷りになるほど、多くの人に読んでいただけたのですが、読者が多い分、リクエストも多くいただきました。
前作については、どちらかというと抽象的な内容が中心で、PLMの狙いや目的といった部分を伝えることが主でした。
そのため、お客様にはPLMの勉強会に使っていただいたり、稟議書を作るときの参考として活用いただいたりするケースが多かったです。
いただいたリクエストの中で目に付いたのが、「考え方は理解できたが、もう少し実践的な内容を知りたい」というお声でした。
そのため今回の書籍では、テーマ自体は変えずに、より実践的に、具体的なデータモデルやテクノロジーの話を中心に構成しています。
鳥谷:
「儲かるモノづくり」と言うと、世の中の見え方としては、やっぱりどうしても原価のデータを持つERPが中心で、そこがまず重要だという認識が強いと思います。
でもその前に、ものづくり産業にはPLMやBOMがあるよね、ということを前作から主張されていましたね。
小田:
そうです。ERPはどちらかというと利益に直結するイメージで語られやすいですが、「実際の儲けを作り込む要素はPLMにある」という考え方で、これはシリーズとして一貫している部分になります。
鳥谷:
前作に比べて実践的な内容が多く入っていた印象でしたが、経緯を聞いて納得しました。その他に、今回の書籍の特徴はなんでしょうか?
小田:
主に3点ありますが、まず1点目はPLM構築に携わられる方に向けた、データモデルの理解を深めるための実践的な内容が載っていることです。加えて、時流に沿って「PLMにおけるAI活用」と、「ERPを連携する視点からのPLM」という2点のテーマが盛り込まれています。
モノづくりAIに関して、当社は約10年前よりR&Dを行っており、結果として2つの製品をリリースしてきました。このプロセスで培ったAIに関する知見や機能をPLMに実装しています。書籍では、その内容や今後のマイルストンにも言及しています。
また、PLMベンダーからの視点以外に、ERP側から見たときに「PLMはどうあるべきか」「連携することでどんな価値が生まれるか」というテーマについてもビジネスエンジニアリング株式会社の若林さんが担当されています。
※図研プリサイトは、ビジネスエンジニアリング社のmcframeシリーズに「mcframe PLM」としてVisual BOMをOEM提供している。
実績情報の還流とBOM/BOP
鳥谷:
その流れでいうと、今日は設計・製造連携や、XVLとの接点、そしてAIのところも含めて見ていきたいですね。書籍にはBOPとかM-BOMの話もかなり出てきますよね。
小田:
はい。もともとVisual BOMではM-BOMの機能を有していました。
しかし、より高度なERPとの連携のためにはSCMや原価管理の実践的な知見が必要だったこともあり、BOP機能の実装やM-BOM機能のアップデートはビジネスエンジニアリング社と横断的な開発体制をとりました。その結果、マスタ情報の連携のみならず実績情報(トランザクションデータ)をPLMサイドで活用する素地ができました。
たとえば、開発初期や引き合い段階で、ERPから返ってくる実績情報をPLMで確認し、想定よりコストが高かったもの、あるいは想定に対して何パーセント以上ずれたもの、そういった差分を可視化する。
すると、自分たちの実力値が見えてきます。そこをフロントローディングに活かす、設計の時点で気づけるようにする、というPDCAサイクルのフローを実践することができます。

つまり、BOPを単に製造準備工程の効率化のために活用するのではなく、実力値を把握し活用するためのインフラとして構築することで、儲けを作り込めるという考え方です。
鳥谷:
ERPからPLMに戻すだけじゃなくて、もっと現場の細かいデータ、実際の作業とか、そういったものまで活用していこうというイメージなのでしょうか。
小田:
そのとおりです。ERPからの情報の還流だけではなくて、本当はもっと細かい現場の情報、実績情報、品質情報を取ってきて、それをPLM側で使えるようにしたい。その点で今、御社におけるシムトップスさんとの連携に注目しています。
プレス発表されていたi-Reporterやi-Repo Serverの連携のお話ですが、現場の情報を吸い上げて、PLM側で「実力値」として使えるのではないか、と考えています。

そうすると、ダウンストリームDXのその先まで含めて、設計→製造→現場実績→再び設計へ、というループを構築できます。
鳥谷:
XVLという軽量3Dフォーマットは設計の3D CADデータを製造やサービスの現場でも活用しようという思想で開発されました。さらなる価値を提供するためには、現場から設計へフィードバックというのは、我々としてもぜひ取り組んでいきたいところです。
ところで実際にM-BOMやBOPを導入して、それで効果が出ている製造業は増えてきているのでしょうか。
小田:
はい。PLM構築プロジェクトの範囲(スコープ)にBOP/M-BOMの要件が入る割合は確実に増えてきています。そしてその投資に対して効果も出てきています。ただ、我々としては、まだまだM-BOMやBOPをお客様の業務改革のツールとして使い倒してほしいという思いがあります。だからこそ、実績情報をもっとPLMに返し、儲けを作り込むプロセスで活用できるようにしたいのです。
鳥谷:
上流からBOPへデータを流し、現場でとった実績情報を、PLMにフィードバックする。この部分のループができると、本当に面白い取り組みになりそうですね。
小田:
以前、御社のセミナーでXVL Studioで工程検証した結果を内製のBOPシステムに戻しているというお話を聞き、当社としてもニーズを再認識しました。この内容は、カスタマイズではなく標準パッケージで提供する機能として実装すべく、現在R&Dに取り組んでおります。
XVLパイプラインとVisual BOM:設計〜製造実績をつなぐデータループ
小田:
今までは、Visual BOMの中でBOPを完成させようとしていた部分もありました。
たしかに設備や工具のマスタ/メタデータレベルであればBOPサイドで管理活用していくことに問題はないのです。
しかし、工程検証を行う上での制約条件は多岐に渡ります。作業者の姿勢や部品の干渉を見ながら組順を決めるであるとか、そのようなところまで含めると、編集ツールとしてはXVL Studioを使い、検証、および追加を含めて編集した結果をBOM側に戻す、という形のほうがいいのではないかと現在考えています。さらに作業実績――――たとえば本当は5秒で終わる想定だったのに10秒かかっているであるなど、そのような実績まで戻せると、どんどん取り組みが広がります。
「全部Visual BOMでやりましょう」という話ではなくて、XVL Studioを使ったほうが適している領域は明確にあると感じています。
ちなみに、XVL上で工程アニメーションの動作を、実際の標準時間(ST)と連動させることはできるのでしょうか。
鳥谷:
「工程の順番を見る」であったり、「工程アニメーションの自動作成」であったり、機能として用意しています。標準時間との一致については、作業者がアニメーションを確認する時間のことを考慮して完全にはやっていません。
一方で、お客様からも保存ボタンや次へボタンを押すのではなくフットペダルを使うなどして、もっと便利に、自動にできないか、というご要望はいただいていて、今後そうして収集した実績も含めて動画認識などのAIと組み合わせることで使い方が広がる可能性があるかなと考えています。

小田:
実績収集の自動化が進むことで見落としていた改善ポイントが露わになりますね。そうなればAIに工程の改善案を提示させることも視野に入ってきます。
鳥谷:
最近、BOPやBOMのデータを「XVL Studioで定義し、XVLで管理したい」というお客様が増えています。これはXVLの有用性を示しています。一方、本来BOPやBOMのデータというのはしっかりデータベースで管理すべきもので、そこから活用するべきという考え方もあります。その意味では、XVLで持った情報をVisual BOMが受け取ってくれて、それを現場とつなげられるなら、大変有益です。
小田:
はい。E-BOMとM-BOM、BOPのつながりだけでなく、「現場とM-BOM/BOPのマスタをどうつなぐか」も大きな価値になると確信しています。
鳥谷:
先ほどもお話に出たシムトップスさんの話で面白かったのは、いわゆる日本型のソリューションだというところです。グローバルでは全部ITシステムに集約しろ、となりがちですが、日本ではどうしてもExcel文化が強くて、現場ごとにいろいろな帳票がある。そこを入力インターフェースとして情報収集するという発想がすごく日本的で、それなら製造現場のExcel文化と連携していこう、という話になる。そうすると、XVL Studioが持っている標準工程ライブラリの機能が有効になってきます。現場で使われる言葉の辞書やその標準化というのも大事になってきますね。
小田:
工程ライブラリとか辞書化の話でいうと、IVI(※)の標準化活動の文脈もありますよね。
我々もIVIのPLM標準化活動に出ていますし、シムトップスさんも、ビジネスエンジニアリングさんも参加されています。その活動の中で、工程やモノづくりで使う言葉を標準化して辞書化していこうという動きがあって、今後、さらに必要になってくるであろう他社や海外工場との連携を視野に入れると、自社の言葉だけでBOPを作っていると都度翻訳、および検証が必要になります。
その意味で、工程ライブラリや標準辞書を使いながら、しかも多言語に対応していく、というのは今後かなり重要なテーマになると考えています。AI翻訳があるとはいえ、土台の定義はやはり必要です。このあたりも書籍の中で一部触れています。
※一般社団法人 インダストリアルバリューチェーンイニシアティブ(Industrial Value Chain Initiative)
鳥谷:
当社の書籍(『製造業のDXを3Dで加速する ~デジタル家内制手工業からの脱却~』)では、「デジタル家内制手工業」という話をしています。3Dで設計したはずなのに、その後で2Dの帳票や作業指示に戻ってしまい、設計変更が起きたときに全部手で直している、というのがまだ製造業の実態です。そこをどうにかしたい。
そのためには我々が3Dデジタルツインと呼んでいる、製品を表現する3Dモデルが必要です。それは形状だけではなくて、E-BOMの情報も含んでいる必要があります。その意味で、Visual BOMが3DとE-BOMを融合したマスタとしてデータを持っている価値は、後工程での3D活用を実現するという意味では、極めて大きいです。
製造やサービスの現場で3Dを活用するには、当然3Dデータは必要です。そして、その3DデータがBOMと連携している必要があります。しかし、実際には、構成が固まっていなかったり、部品番号も決まっていなかったり、というようなケースもまだまだ散見されます。
小田:
図研グループはCAD開発が祖業なので、正式品番が確定する前のCADデータがある、という現場の実態はわかっています。なので、BOM上で未採番の品目を扱えるようにしていて、正式に決まったら置き換える、ということを以前からやっています。これはたとえば、メカ部品でもエレキ部品でも起こるのですが、「未採番の部品でも、コスト集計や納期予想、先行しての工程検証に使いたい」というようなケースを想定しています。
要するに、「完成してからBOMにする」ではなくて、CADとBOMが一緒に育っていく。そこをデジタルツイン的に成長させていこうというのが、もともとVisual BOMのコンセプトなのです。そう考えると、CADでデータが確定したからPLMを使う、ではなくて、CADで設計している最中、さらに言えばCADに手を付ける前からBOMが使えること、3DとBOMが常に一緒にあることの価値は高いと考えています。

鳥谷:
原価企画も含めた設計支援を行っていくというのがVisual BOM初期からのコンセプトでしたね。3Dデータを活用していくにあたって、コスト等も連動しつつ設計変更したデータがまた3Dで表現できるという状況になってくると、その後作ったXVLベースの作業指示まですべて連動してくれるので上流から下流まで澱みなく3Dデータが流れるイメージになりますね。
小田:
おっしゃるとおりです。昨今PLMを導入するお客様でも、テーマの一つに「あらゆる工程での3Dデータ活用」を掲げる企業がかなり多くなってきました。
鳥谷:
実際、直近のセミナー(製造業DX×3Dセミナー2026)でお聞きしたお客様の関心もAI、3D図面、Web3Dの順で高いです。
小田:
なるほど。AIに関しては対談の後編に譲るとして、我々も3D図面関連は具体的なお話をいただくことがあります。
例えば、設備や住設系製品に代表されるような、パラメトリックに製品や部品の寸法や組み合わせが変動する場合、BOMだけではなく現場で参照する3Dを付帯したドキュメントを自動生成できないかといった内容です。
CADを毎回立ち上げなくても、受注確定したBOMで持っているパラメーターを活用しXVLやWeb3Dによる作業指示図面などを生成するという流れで提案できると考えています。
鳥谷:
建築建材分野に向けては、XVLをパラメトリックに変形したり、色の変更を行ったりするといったソリューションも提供してきました。一方で、変更範囲には制約もあるため、今後具体的な案件で実現機能を詰めていきたいですね。
小田:
ぜひお願いいたします。
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