Case Study

導入事例
2025.05.07 Visual BOM

加熱撹拌機メーカーのPLM導入事例

梶原工業株式会社

 

味に繊細な日本人が育んできた食品の数々。その日本人の求める味づくりの舞台裏で、食品を熱しながら混ぜるという日本独自の加熱撹拌(かくはん)機を世に送り出している梶原工業株式会社。街の和菓子屋さんから大手食品メーカーまで数多くの企業に機械を納入しており、コンビニのお弁当、レトルト食品、冷凍食品の多くは同社の加工機械で製造されていると言っても過言ではない。

そんな同社は、設計業務の効率化と更なる製品品質向上を実現するため、図面とBOMに超軽量な3Dデータ(XVL)を加えて管理することで、設計成果物の全社的な共有と活用を実現する図研プリサイトのPLMソリューション「Visual BOM」を導入した。

食品機械のリーディングカンパニーである同社において、Visual BOMはどのように業務を支援しているのだろうか。同社の東京工場に訪問し、設計部のお二方に話を伺った。

  • 加熱・冷却乳化機Σ
加熱・冷却乳化機Σ

お客様の企業プロフィール

会社名
梶原工業株式会社
本社
東京都台東区松が谷2-13-13
工場
東京工場:埼玉県越谷市増森工業団地
設立
1939年1月
資本金
9,600万円
事業内容

食品加工機械・製菓機械の製造

お話を伺った方

  • 設計部 部長

    黒瀬 昌孝 様

  • 設計部 主任

    宮内 新平 様

取材年月日:2025年3月5日

採用いただいたソリューション

Visual BOM

モノづくりを強力に支援する
PLMソリューション

従来の運用に限界を感じ、3D設計への移行を検討開始

設計部門において現在ほとんどの図面はCADで作成されているが、紙図面を「正データ」として運用している場合、些細な修正はCADデータに反映されず、紙図面のみに反映されてしまうことがある。このような状態で過去のCADデータを流用して新規受注機の設計を始めてしまうと、部品を製作してから設計ミスに気付くなど、現場に混乱を招いてしまう。

設計部 部長の黒瀬昌孝氏は、このような問題を「CADデータ正」の運用に変えて解決すべく、同社のPDM導入を推進した一人だ。PDMにスクラッチ開発の特注システムを連携させて、ユニットおよび部品の流用が間違いなく容易にできる環境を作り上げてきた。

しかし、主として2D CADで設計していた同社は、新たな課題に直面した。構築したシステム上で組立図(アセンブリ)と部品図および部品表の連携がうまく取れず、担当者のスキルによっては設計ミスが発生してしまうという課題だ。これらを解決するには「3D設計への移行が必須」だと黒瀬氏は考えた。また、納入先ごとに異なる設計図面の版管理や、特注システムによる制約も課題となっていた。

「例えば、ある機械を複数社のお客様に納入している場合、A社には第二版の図面のもの、B社には第三版の図面のものなど、納入している図版の違いがあります。お客様の機械に修理が発生した際、どの図版で納入しているかが重要なのですが、従来システムだと管理しきれない問題がありました。また、従来システムはCADやOSを容易に最新版へアップデートできない制約があり、各ソフトウェアがサポート終了を迎えると、システムが立ち行かなくなる懸念を抱えていました」(黒瀬氏)

  • 設計部 部長 黒瀬 昌孝 氏
設計部 部長 黒瀬 昌孝 氏

BOM登録の「簡単さ」と3D社内展開の「しやすさ」がポイント

こうした課題への解決策に悩む中、同社に3D CADを提供する株式会社大塚商会から紹介されたのがVisual BOMだった。

黒瀬氏は、Visual BOMについて「従来システムの課題解決に加えて、3Dアセンブリから調達システムへデータ連携可能な部品表作成、承認管理によるデータの保護、修理や改造時に参照できる実績データの管理など、流用設計の効率化を突き詰めてきた従来システムの機能を引き継ぎつつ、3D設計移行に伴う機能アップも期待できるシステムはこれしかない」と感じたという。

設計部を中心に5、6社のシステムを比較・検討した結果、同社は、Visual BOMの採用を決定した。2023年5月、システムの本番運用を開始して、現在は機械設計、電気設計、営業技術のメンバー合わせて総勢50名程度で利用している。システムの導入検討から社内展開まで、中心となって進めてきた一人である設計部 主任の宮内新平氏は、システム選定の決め手を次のように教えてくれた。

「3D CADで作成した構成を、XVLを介してそのまま設計部品表として登録できること、他部門への3Dデータの展開が容易に実現できそうなことが大きな決め手でした。また、従来のシステムで管理していた図面データの移行が容易であったこともポイントでした。」(宮内氏)

  • 設計部 主任 宮内 新平 氏
設計部 主任 宮内 新平 氏

業務特性を考慮した機能で、改善と向上を実現!

システム導入後は、納入先ごとの図版管理が問題なくできるようになったという。Visual BOMは、図面・品目・BOMを並べて、変更前後で更新された箇所の色を変えて表示する機能を搭載しているが、本機能が機械の改良に役立っている。

「お客様が求める食品の風味を安定的に再現するため、お客様ごとのリクエストを汲み取り、細かいところまで設計するのが我々の強みです。BOMを並べて比較できる機能によって改良時の検討が以前より進めやすくなったので、効率的に強みを活かすことができるようになったと感じています」(宮内氏)

また、近年、現場にタブレットを用意して、ペーパーレスで図面を展開する取り組みが進んでいるが、同社の現場は溶接作業が多く、現場への図面展開は紙のままの方が便利な側面がある。このような同社の特性を加味して、図研プリサイトが提供したVisual BOMのカスタマイズ機能も役に立っているという。

「従来のシステムでは、図面を1枚ずつ開いて印刷しなければならなかったため、非常に時間がかかっていました。現在は、複数枚の図面を、製番や製作数など出力したい内容含めて一括で印刷できるようになったため、出力作業が劇的に楽になりました」(黒瀬氏)

  • システムの全体像
システムの全体像

お客様への更なるサービス向上を目指し、古い図面の3D化を進行中

他にも、社内展開を担う宮内氏は「オーガナイザー(Visual BOMの管理ツール)が非常に便利です。運用開始後のユーザーからのリクエストに対応できることが多く、管理者として非常に役に立っています。また、ユーザーや部門ごとに管理している情報の参照・編集権限を設定できるため、システムを社内に横展開するときに便利です」とも話してくれた。

黒瀬氏からは、Visual BOMの更なる活用を踏まえて「逆展開機能で、展開結果に製品のみ表示できる部分は非常に便利です。当社の特性上、製品ではなく、納入先の一覧を結果に表示できるようになると、もっと便利になります」と、期待を込めてリクエストをいただいた。

1939年設立の長い歴史を持つ梶原工業。老舗の和菓子屋さんなど、30年以上前に納入した機械を現役で大切に使ってくれているお客様も多い。できる限り、そのような機械の修理・保守を対応するところも同社の強みの一つであり、数千枚を超える古い図面の3D化にも取り組んでいる。Visual BOMで共有できる3Dデータが増えることで、更なる全社的な活用が見込めるだろう。

  • (左から)黒瀬氏、宮内氏
(左から)黒瀬氏、宮内氏
※ 構築したシステムの全体像はPDFでご覧いただけます( PDFのダウンロードはこちら )
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