AI実装フルオート型ナレッジ活用ソリューション
「Knowledge Explorer」
リリース記念 特別対談
(左から : ギリア 増田様 / 図研プリサイト 上野 / ギリア 近田様 / 図研プリサイト 外村)
(左から : ギリア 増田様 / 図研プリサイト 上野 / ギリア 近田様 / 図研プリサイト 外村)
AI実装フルオート型ナレッジ活用ソリューション「Knowledge Explorer」のリリースを記念して
ギリア株式会社(以下 ギリア)と図研プリサイトの特別対談を3章に渡りお送りいたします。
ギリア株式会社
取締役 HE事業部 AIソリューション部 部長
ギリア株式会社
HE事業部 知能技術開発部 部長
株式会社図研プリサイト
代表取締役社長(2018年10月当時)
株式会社図研プリサイト
開発部 コグニティブテクノロジー開発課 課長
上野:我々も御社に相談した当初は、AIについて過度な期待をしていた部分がありましたが増田さんと近田さんの期待値コントロールのお蔭で、適切なAIを複数実装したKnowledge Explorerを10月1日に、リリースできるところまでたどり着きました。
増田:いろいろな企業様と取り組みをやってきていますが、概してAIに対する期待値が高い分、取り組み序盤から牽制球は投げておきます。ただし、単に「できません、できません」って言うのは良くありません。「できません」でお金をもらうのって、めちゃくちゃ楽ですし、「できません」ってラインを自分たちで下げておけば、僕らも頑張らなくてもいいわけです。なので、「できるけど、このラインまでですよ」という話を最初に、握るようにしています。日進月歩の技術でもあるので、やっぱりお客さんとの間でどこを期待値と設定するかっていうのが、一番のポイントだと思います。
上野:さっきも話しましたが、当社からの相談に対してAIの「コンサルテーション」や「共同研究」みたいなご提案をいただいた企業もありました。つまり何が出来そうで、何は出来そうではないかというのが、はっきりしないんです。うちは最終的にソフトウェアとして物を納めてくれるパートナーさんを探していましたから、そういった提案では、受け容れられなかったんですね。
外村:私も各社から、結構お話をお聞きしたんですけど、やっぱり文章、言語ってなった途端にどちらさんも基本的には及び腰。共通して実績があるのは、猫の画像認識。どこもかしこも。だから、「猫じゃないんだけど、ウチは」っていう感じで(笑)。
近田:たぶん自然言語ってやっぱりすごく歴史が長い分野で、みんな「こういうところはできないんじゃないか」という考えがあるのだと思います。御社が求めるクオリティーまでには、達成できないんじゃないかなみたいな。
上野:でも、我々は基本的に今まで統計ベースでやってたKnowledge Concierge(注:Knowledge Explorerの基となったシステム)と言うアプリケーションがあったので、そのレベルも、何をなし得たいかも、依頼される側もわかってるはずなんですよね。重要な単語を割り出して、その相関を導くというのは、どう考えてもたったひとつの正解にはたどり着きません。であれば、どんなアイデアがあるかを出して欲しかったのですが、御社以外は、「うーん」っていう感じなんですよね。もしかしたら、文章に対しても、猫と虎の赤ちゃんを区別できるくらいの期待を、持たれていると思われたのかも知れませんが(笑)
なので今回、御社にコンタクト出来たのはラッキーでした。清水社長に弊社セミナーでの基調講演をお願いしに伺ったときに、何の前提も無く「こんなことやっているんですが、手伝ってもらうことはできますか?」とお話ししましたら、「ああ、いいですよ」っていう感じで受けて頂けました。
増田:軽いですね(笑)それで巻き込まれちゃった訳ですね。(笑)
上野:いえいえ、そこまでの話しの中で、清水社長から、AIの様々な可能性や使い方について伺っていたので、多分何か勝算はお持ちだったと思いますよ (笑)
近田:ギリアが温めてきた社内技術とつながるのでは無いかと言う感触もあったのだと思います。
外村:そもそも、言語を対象にしていらっしゃるAI開発会社ってそんなにないですよね。
増田:「やってる」って言う会社はありますが、ここまでやっている会社はほとんど無いと思います。オープンソースやフリーソフトとかをうまく組み合わせると、どこでもそこそこのものができますが、ただ普通は、それ以上については、深追いしていかない感じですよね。今回のKnowledge Explorerの開発は、お互いその程度では良しとしないのが、わかっていたので、ここまでの製品に到達したのだと思っています。
上野:今回、本当に結構細かいところを拾っていただいていますよね。
外村:基本はある手法、例えば分散だったら分散でやるけれども、それでカバーできなかったところに関して、都度、別の手法を用いて埋めていったという事でしょうか。
増田:今回は単なる実験では無く、製品のコアをつくるということですから、ここは実は重要な話です。取りこぼしてしまっているところをうまく深層学習やニューラルネットで解決しようとした事が、今回の大きなチャレンジだったと思っています。
近田:AIの技術は日進月歩ではありますが、既存技術は既存技術で、今まで残ってきているだけの理由があります。その既存技術も使える場面と、使えない場面があるので、使えるなら使いましょう、使えないものは新たな技術を探して解決していきましょうという感じのアプローチでした。
外村:AIを用いた開発の分野の情報は、普通のソフトウェア開発の世界みたいに、検索エンジンで調べれば、出てくるものでもないと、昨今特に感じていますが、御社では、それをどういうふうに社内で共有されているんでしょうか。
近田:シーズがありそうな技術に関しては、各人に割り振って追いかけ、調査した内容を社内で共有しようという活動をしています。ただ最近は情報の調べ方も大分変ってきました。論文の公開のスピードがすごく早くて、昔は公開まで数か月かかっていたのが、今は論文サイトに届いたらすぐ公開、その後一般の人が内容を審査すると言う様な仕組みも出てきています。ですので、そういった最新の情報も調べたり、場合によってはその論文を見た、他の研究者がSNSでつぶやいていたりする内容もチェックしています。
外村:今回のKnowledge Explorerの開発も、ある手法を試していただいて、「ダメ、難しかった」と判断して、次の手法に行きました。結局このプランBが上手く行ったのですが、例えばどこまでやったら次のオプションを選択するのかと言う判断基準は、やっぱりたくさんのプロジェクトを経験してる人じゃないと、むずかしいのだろうなと思ったんです。
増田:そうですね。難しいですよね。僕らが判断して手法を切り替えるときに、お客さんへの説明がわりと難しくて。「なんで切り替えたの?なんで」と言われます(笑)。
上野:そうなんですか?ウチも今回、結構進んだ段階で、プランBに切り替えた訳ですが、一番知識を持っている増田さんや近田さんが、「こっちのほうがいい」って言うのだったら、それしかないと思いましたけどね。切り替えた理由や、新旧の比較はいろんな要素が合ったんでしょうけど、その説明を聞いたところで、あまり意味は無いと思います。それよりも、プランBが上手く行くことに、祈りを捧げた方がマシです (笑)説明を求める人たちは何が知りたいんでしょうか。
増田:おそらく、社内で進捗を報告しなければいけないからでしょう。例えば上司が「どう進んでいるの?手法Aでうまく行っているの?」と聞いた際に担当者が「手法Aは難しく、手法Bに切り替えました」と報告すると上司は「なんで切り替えたの?」と聞きますよね。きっと。その際に切り替えた理由が「パラメーターのチューニングが手法Aだと難しいことが分かったので」と答えた際に、「では、もっとチューニングに力を入れて手法Aを詰めて行った方が良いのでは」みたいな事になる場合があります。こうなるともう説明は難しいですよね。
近田:結局、評価基準や期待値みたいなところとの兼ね合いになると思います。達成したい目的があった場合に、最初に選択した手法でうまく行くかどうかは分からない事を取り組みの初期段階から担保してもらえていれば、我々も柔軟に考えて目的に向かって切り替えていきますので、そこを腹くくりしてもらえていないと難しいですね。
増田:ベースには我々を信頼してもらうということが必須だと思います。
上野:私は増田さん、近田さんの人間性や技術力を全面的に信頼しています。もちろんお二人だけで無く、当社を担当頂いている林さん始め、UEIとギリアの両社の皆さまに、深い信頼と畏敬の念を持っています。
増田:ありがとうございます。そういった意味では信じていただけているのだなと言う事を感じていました。ある程度任せていただいたので、結構僕らもいろんなことを試せたし、期限ギリギリまでいろいろなご提案もできたかなと思っています。
上野:いや、ほんとにいろいろ考えてもらって、我々が気付かないようなところで「こうしたら良いのではないか」というご提案もいただけて、すごくありがたかったですね。当社もたくさんのパートナー企業に仕事を依頼していますが、受け手側として従来のシステム開発的なアプローチで「こうやって作ったらいいんですね。はい、できました」って、要求した以上のことをやってもらえないケースがほとんどです。仕様書を交わしているので当然と言えば当然なのですが。ところが今回のプロジェクトでは両社とも、テーマだけお伝えして、後は面白がってやってくれるというか、「こんな方法もある。こんな方法でやってみたんですけど」みたいなご提案をいただけたので、途中からは、定例のミーティングで、新ネタを聞けるのが楽しみでした。
増田:そうですね。わりと僕らも社内でいろんな手法を考えてみて、「じゃあ、今回これでどうですか?」みたいな。
外村:どんどん重要語句抽出の精度が良くなってきているのが分かって、すごくうれしかったですよね。
増田:従来のシステム開発的手法でやると、最初に手法をがっちり決めちゃって、「じゃあ、これはもうウチと御社でコミットしましたね」と。それで「じゃあ、精度が悪かったですけど、その手法って御社にもご了承いただいたので、最後に悪かった理由をペーパーを付けて提出します」と、そういう感じじゃないですか(笑)。
上野:それは全く意味がないというか、日進月歩の技術に対する夢が無いですね。モワモワと始めて、そのモワモワの形が見えてこず、モワモワのままで終わりそうとわかったら、元々なかったことにすれば良いだけだと、僕はずっと思ってました。そのモワモワさが分からないというか、期待値を設定出来ない会社は、提供側も利用者側もAIの導入に踏み込めません。うまくいくかどうかなんて、どこにも保証はありません。経営者が言う言葉ではありませんが、新技術に対する投資はある意味バクチです。今回そのバクチに乗ってもらえたということだけでも、すごくありがたかったんですよ。増田さんの人間力ですね(笑)