Case study
導入事例

Knowledge Explorer

四輪R&Dセンターでのナレッジ活用事例(株式会社本田技術研究所)

Hondaは軽自動車のN-BOXをはじめ、グローバル機種のCIVICやACCORD、CR-V、スポーツカーのNSXなど、さまざまな四輪車を提供している。また四輪車だけでなく、二輪車や発電機、芝刈機などの汎用製品、Honda Jetなど、モビリティに幅がある。本田技術研究所はそのHondaの研究開発部門である。

 

同社の一部グループでは、CAE(Computer Aided Engineering)のレポートやマニュアルなど情報が属人化してなかなか解消されず、ドキュメント探しによる時間のロスや、技術伝承漏れの発生に課題を感じていた。そしてその解決策として行き着いた先がKnowledge Explorerであった。

 

今回、同社で四輪車のボディCAEを担当している谷川氏にインタビューを行い、Knowledge Explorer導入の経緯や導入後の変化、今後の期待について話を伺った。

お客様の企業プロフィール

会 社 名 株式会社本田技術研究所(Honda R&D Co.,Ltd.)
本  社 埼玉県和光市中央1-4-1
事業内容 輸送用機械器具の研究開発
お話を伺った方
オートモービルセンター
第11技術開発室 第2ブロック
谷川 裕樹 様

(取材年月日:2019年11月05日)
採用いただいたソリューション
Knowledge Explorer

形式知化されても探せない、属人性の高い情報

企業が蓄積した技術情報やノウハウを社内で共有し、企業の競争力を上げようというナレッジマネジメントの動きが高まっている。暗黙知である個人の知識や技術を文書化し、形式知として企業内に共有することで企業の資産となる。しかし、文書化したにも関わらず、その情報が属人化してしまっていては意味がない。機会損失や業務上のミスを防止するためにも、資産である全ての情報をいかに利活用するかが重要である。

本田技術研究所では、数万のドキュメントを抱え、属人化された情報が日々増え続けることに悩まされていた。同社の谷川氏は次のように語った。

「先人たちが築き上げてきたデータの多くは、個人が所有していたり、共有サーバーに置いてはあるものの探し出せなかったりと、属人性がとても高い状況でした。これにより、データの置き場所を人に聞きに行くという時間のロスも発生しますし、技術面でも伝承漏れが発生する恐れもありました。例えば、新人や異動したばかりの人はどうしても人に聞くしか手段がない状況でした。」

谷川氏の部門では、四輪車のボディを担当しており、振動騒音や乗り味の観点でCAEを行い、お客様が欲しいと思う商品づくりを進めている。

「車種ごとに担当がいるので、ある車種の担当者は知っていることを、別車種の担当者は知らないということも起こり得ます。その内容を知りたい場合は人づてに聞きに行くということが必要でした。聞きに行った相手が不在の場合は、作業が止まってしまうか他の人に聞いて解決するかのどちらかですが、どちらにせよ、ドキュメントを探すという作業に時間がかかっていました。」(谷川氏)
  • 本田技術研究所_谷川様.jpg
オートモービルセンター 第11技術開発室
第2ブロック 谷川 裕樹 様
このような課題をもって、谷川氏と何人かのメンバーで属人化された情報を利活用できるソリューション調査を開始した。

「情報の属人化を解消するためには、データベースを構築し、それを運用していくなど、非常に手間と労力のかかる取り組みが必要不可欠だと考えていました。そんな中、当時の上司から紹介されたのが、Knowledge Explorerでした。実際に動かして見せてもらい、何万ものドキュメントの中から自分が必要とするものを引き出せることがとても魅力的に感じました。」(谷川氏)

AIにより実現した、すばやい情報へのアクセス

図研プリサイトが提供するKnowledge Explorer は、AIを実装したナレッジマネジメントシステムである。社内の共有サーバー上のドキュメント群を予めAIが分析し、重要な言葉を特定することでユーザーのキーワード検索の支援をしたり、執筆中の文書に対しておすすめのドキュメントをPUSHしたりする。これによりユーザーは、電子化・形式知化しても活用されていなかった有益な情報を、必要な場面ですばやく見つけ出すことが可能になる。

また、既存のファイルサーバーに設定されたアクセス権を利用して検索ができることも、ユーザーに喜ばれるKnowledge Explorerの特長である。

本田技術研究所では、谷川氏を中心とした一部のメンバーから仮導入という形で使用を開始し、徐々にその範囲を広げて本導入に至った。Knowledge Explorerを導入した決め手について、谷川氏は次のように語った。
  • 本田技術研究所_谷川様_インタビュー風景.jpg
インタビュー風景
「社内には日本語のドキュメントが多いので、日本語ドキュメントに特化した機能を多く持っていることも決め手の一つでした。日本語の検索ツールではKnowledge Explorerが一番だろうという結論に至りました。あと、アクセス権を適切に設定できることもポイントでした。このようなシステムを導入する際はセキュリティ関係が課題になってきますが、Knowledge Explorerの場合はセキュリティがしっかりしているという点でも、安心して導入できました。」

現在は約30名のメンバーがKnowledge Explorerを利用している。「ドキュメントの在り処を人に聞きに行くことが減り、埋もれていた情報が手に入りやすくなりました。また、課題を解決したのはもちろんですが、ドキュメントを探すという負荷がなくなったことによって、メンバーがより気づきを得ることや、知見を広げることに注力できるようになりました」と谷川氏は笑顔で言う。

とはいえ、最初の一年は苦労もあった。Knowledge Explorerは2016年にリリースされ、2018年に精度向上のためにAIが実装され、今の形となった。本田技術研究所は、AI実装の前後を知るユーザーのうちの一社である。

「導入したばかりの頃はAIが実装される前で、検索キーワードに対して正しくアシストされるように予測キーワードのメンテナンスをするなど、管理面での苦労がありました。AIが実装されてからは、不要なキーワードが出て来なくなり、管理の手間が減りました。すごく進化したと思います。加えて『構造』というキーワードで検索した際に『ストラクチャー』などの関連したキーワードでも検索がかかるのが、とてもありがたいです。」

Knowledge Explorerへの期待

Knowledge Explorerは、指定したデータベースの中から、ユーザーにとって有益な情報を提示する。データベースに蓄えられた情報が良質であるほど、有益で実用性の高い情報が得られることになる。これを踏まえて、谷川氏は次のように語る。

「誤ったデータが提示され、それを参考にして間違った方法で作業してしまうことを防ぐためにも、データベースに良質な情報を蓄えるための工夫が必要です。一人ひとりが『良い情報をみんなに共有する』という意識を持ってKnowledge Explorerを使ってくれれば、自ずとそういった情報がデータベースに蓄えられるという副次的効果も期待できると感じます。」

2年前に同社に導入されたKnowledge Explorerは徐々に利用メンバーを拡げている。さらに展開を加速し、『良い情報をみんなに共有する』範囲を拡げるためにも、ユーザーに今以上に価値を感じてもらえるよう、Knowledge Explorerも日々進化を続けなければいけない。

「グループ内にとどまらず、グループの垣根を超えて活用していけるよう、Knowledge Explorerの魅力を広めていきたいです。そのためにも、Knowledge Explorerの更なる進化に期待しています。」(谷川氏)


※本記事はPDFでもご覧いただけます。( PDFのダウンロードはこちら )