Glossary
用語集

暗黙知

著者:図研プリサイト 佐藤 崇行

更新:2020/08/21 17:30

暗黙知とは、経験や勘に基づく知識のことであり、言語化できない、または、たとえ言語化しても肝要なことを伝えようがない知識のことである。


例えば、自転車を乗る事を考えた時、どのようにすれば乗れるようになるのかを語る事は困難だ。実際には、ペダルへの足の乗せ方、体重の移動の仕方など、様々な技術が必要なのにも関わらず、身体的技術や認識に伴うスキルは、記述することが非常に困難である。つまり、人は暗黙のうちに言葉には出来ないが、身体をコントロールする知、自転車に乗るということを実行出来るだけの知がある。これが暗黙知である。

暗黙知と形式知の違い

ナレッジマネジメントには、「暗黙知」と「形式知」という考え方がある。


例えば、自動車の運転を例にすると、初めて自転車に乗る際、ハンドルの切り方やブレーキのかけ方などの基本的な操作は口頭やマニュアルで教わる。これは聞いたり読んだりすれば誰でも意味を理解することができる「形式知」である。


運転方法を学んだら教わった通りに運転してみるが、「形式知」として運転方法を知っても、すぐに完璧に運転できるようにはならないため、何度も練習してコツを掴み、最終的には「ハンドルはこのように切る」「ブレーキのかけ方はこうだ」と毎回考えなくても、個人の感覚で運転できるようになる。


マニュアル化された車の運転の仕方は「形式知」と言えるが、車を運転する感覚自体は、言葉で説明することが難しい「暗黙知」と言える。


  • 暗黙知:言語化されていない主観的知識
    個人の過去の経験から成り立つ主観的な知識、あるいは言語化されていない(できない)知識。


  • 形式知:言語化されている客観的知識
    主観的な知識を文章や図を活用して言語化したもの。


「暗黙知」を「形式知」に変換することで、個人が持つ有益な知識は組織内で共有可能となる。

ナレッジマネジメントの暗黙知

長年の経験やノウハウ、熟練の職人のもつコツや勘などの暗黙知は、かつての日本企業が組織内で代々受け継いでいくことに非常に長けていた。先輩から仕事のイロハを教わるOJTや、業務外の時間における宴会や酒宴の席で伝えられる先輩と部下との濃密なコミュニケーション、こうした暗黙知の継承が、日本企業にとって、大きな強みだった。
しかし、時代を経て企業を取り巻く経営環境は大きく変わり、各人が抱えている暗黙知を、形式知化して全社で知の共有を行っていく、というのがナレッジマネジメントの主要な目的の一つである。